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王道を走れば:幻想にて
第五章、その2の4:弔い
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も動揺を覚えているのだ。

「......本当に、死んだんですか?」
「生きているかもしれん」
「連れて帰れればよかったのに」
「だから言っただろう。ここにはおらん。どこにいるかも分からん。知っているだろう、あいつは任務中に行方不明となった。あいつの捜索にいつまでも時間を使うわけにはいかない。そういうことだ」
「御主人、私やっぱり納得できません。捜索は継続するべきだったんですよ!向こう側での事情はどうあれ、そうするべきだった。私達はエルフ領で見捨てたんですよ、あいつを!」
「声が大きい!王女に聞かれたらっ......嗚呼、拙い」

 二人が仰ぎ見た一枚の窓ガラスには、ガラス越しであっても美しさが際立つ水色の髪が靡いていた。ユミルは焦る。

「何とか取り直そう。とばっちりを食らったら何をされるか」
「今は駄目ですよ!王女殿下はこれからアリッサさんとの面会の予定があるって。さっき貴族の誰かが言ってました」
「なに、アリッサと?大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃないでしょ」
「くそ、何もかもあいつのせいだ」

 二人は心配を覚えながらも、豪奢な空間に立ち入るような事はしなかった。あくまで自分達は慧卓に雇われて任務に同道した身分で、任務以外の事にまで権限は及ばない。後ろ髪を引かれるような思いになりつつも其の場を去るより他なかったのだ。
 宮殿の二階の廊下をアリッサは重たそうに歩く。王女の部屋の前には妹分である、騎士トニアが控えていた。赤いサイドポニーが自分の方へ揺れるのを見る。二人は距離を開けて向き合った。
 「殿下に会わせてくれ」と絞るような声に一拍遅れ、「ごゆっくりどうぞ」と道が開けられる。アリッサは戸を開き、ベッドに優雅に座る王女を視界に捉える。王女は憂えげな面持ちで窓の外を見たままであった。
 ぎぃっと戸が閉まる。アリッサは数歩進むと、その場に跪いて首を垂れる。王女が忠義を捧ぐ騎士へ顔を向けた。

「お帰りなさい、アリッサ。無事で何よりです」
「はっ。殿下のために全力を尽くして任務にあたり、これを成し遂げて参りました」
「肩を張らずとも、ここには二人しかいません。どうか楽にして下さい」
 
 温かな声にアリッサの口元がぎゅっと引き締められた。アリッサはゆっくりと面を上げて、主神の御心を現すような慈愛の微笑みが向けられるのを見ると、急きたてるように言い放った。

「殿下。私は、騎士失格です。守るべき者達を敵の魔の手から守り通す事ができず、更には......副官を、ケイタク殿を失ってしまった。殿下に御目通り願ったのはこの失態を断罪すべきと考えたからです。
 彼はヴォレンド遺跡で重要な任務に当たっている途中、不幸にも訪れた山嵐に飲み込まれてしまいました。こちらはリコが、嵐が去った後で遺跡を探し回り、唯一見つける
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