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王道を走れば:幻想にて
第五章、その2の4:弔い
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迎えによこされるくらいなのだから彼もまた高位の者なのだろうーーは、最大限の敬意を現した。

「よくぞ帰還された。執政長官が御待ちだ。ついてこられよ」
「イヤー、長官に掘られちゃうー」
「ジョゼっ!!」
「冗談ですよ、冗談。そんなに睨まないで下さいよ、あなたの分まで奪ったりしませんから」
「っ......ついてこい、下郎」

 民衆の声を背に騎馬と馬車は進む。夏の終わりに別れを告げた宮殿前の広場に足を踏み入れると、はためく王国の旗と管楽器の高調子が彼等を迎え、参列した多くの貴族と勇壮な騎士達の視線が向けられた。城壁や鐘楼の上からも衛兵が見守っているのが分かる。このような注目の中で、しかし平然とした者が多いのは経験を積んだからこそ出来る事だろう。
 正面奥に設けられたひな壇には、冷徹な風貌をした執政長官が今か今かと待ち構えているのが分かる。参列者の間にできた道を進み、一同は足を止めて馬から降りる。旅立ちの際にいなかったリコが姿を見せると一部の者が眉を顰めたが、リタが彼を引き寄せたことで懸念は払われたようだ。びくびくとした様子の彼を姉はしっかりと抱いている。
 かつんと、アリッサが軍靴を鳴らし敬礼をする。

「北嶺調停団、北嶺監察団。団長以下十五名、帰還いたしました」
「ご苦労であった......全員無事とはいかなかったか」

 一部の兵士はこの場には立っていない。腐敗防止の手立てがなく、骸は僻地の土に埋められている。アリッサは表情をさらに引き締めた。

「彼等は最期まで立派でした。王国の正義を全うするために、任務に忠実でありました」
「途中報告で聞いておる。盗賊の襲来が度々あり、それらからエルフを守っていたと。見事な忠誠心だ。主神の御下に旅立った彼等のために国葬を執り行おう」
「有難うございます。執政長官殿」

 それから儀礼的に訓示が述べられ、北嶺調停団、そして北嶺監察団は解散と相成った。結成の日とは対照的にやけにあっさりとした終わりであった。
 夜には任務遂行を称えるために宴が用意されているという。そこで、この場には参加しなかった国王からも言葉が下賜されるとの事だ。男爵はそれを聞いて一層身を引き締めているようであったが、アリッサは心ここにあらずという面持ちで解散早々に宮殿内へと姿を消した。
 他の面々も、仲の良い同僚らに囲われながらそれぞれの場所へと行く。ユミルとパウリナのみがその場に残された。

「さってと。どうしましょうか、御主人」
「さぁな。見当がつかん。ケイタクがこの場にいればどうにか言ってくれるもんだが」
「いないんじゃぁねぇ、どうしようもないですし」

 パウリナは声を落とし、気さくな性格に似合わず沈鬱な色を浮かべた。普段から馬鹿をして周囲を盛りたてるあの若き騎士がいないことに、今となって
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