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王道を走れば:幻想にて
第五章、2の3:エルフとの離別
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二人は木立に囲まれた場所で向かい合った。アリッサが湿った切り株に遠慮なく座れたのは初めから鎧を纏っていた御蔭だろう。
 賢人会議を終えて早々ではあるが、これより北嶺調停団は王都へ帰還する予定となっていた。数日前、アリッサから突如として宣告された言葉に一同は驚いていたが、すぐにその準備に取り掛かり、後は手荷物を軽くまとめることだけを残している状態である。一刻もしないうちにエルフの森と大地から離れてしまい、王都に着くまでは行軍に専念せざるを得なくなる。落ち着いて話せるのは今を除いて他にない。
 キーラは一番に言いたい事を言わんとするも、じっと見詰めてくるアリッサから圧迫感を感じてしまい、口籠りながら別の話題を切り出す。それとて、大事なものに違いないのだが。

「その、リコ君の事なんですが」
「どうした?」
「まだ精神的に不安定だそうです。今朝だって悪夢にうなされて泣いているのをリコさんが慰めていました。ユミルさんだって、もうすこし休んでから出立した方がいいんじゃないかって言ってましたし......」
「この前、言っただろう?執政長官殿より便りがあった。私達の早期の報告を期待されているそうだ。エルフ領の最後の雪解けに付き合ってはられん」
「でも、賢人会議が終わってすぐに出立って、少しエルフに対して薄情な気がーーー」
「私は調停団の職務を正しく執行しているだけだ。キーラ。意見具申の際は、もう少し発言に気を付けるように」

 面喰ってキーラは眉を顰める。話は終いとばかりにアリッサは切り株から立ち上がり、去らんとするも、鋭く投げかけられたキーラの言葉に立ち止った。

「ケイタクさんがいなくなってから、アリッサさん、一気に変わりましたよね」

 振り返ってキーラを見る彼女は込み上げる感情を耐えんと、あえて表情が厳めしくなっているのが分かる。「変わってなどいない」と答える様は、まるで意固地になって自分の過ちを否定する子供のようでもあった。

「いえ、絶対にそうです。脇目も振らずに仕事に専念するようになって。その御蔭で、賢人の方々への協力がスムーズにいったり、会議自体が一か月前倒しになったのは凄い事ですけど、でもこんなに結果を急いで得ようとするなんて......騎士としての落ち着きが無いように感じます」
「ほう。たかが貴族の娘がよくもいえたものだな。私は『騎士の誇り』にかけて、自分の責任を全うしているだけだ。君も自分の責任を自覚しろ。長老より借りた書籍は全て返したか?他にも道具を借りていただろう?それはどうなんだ?」
「どうかしています!アリッサさん!悲しいのは分かりますけど、そんなに変わってしまうなんて......私だって耐えようとしているのに!」
「私はそれが赦させないんだ。上に立つ者は常に、前を向かねばならん。後ろを振り返る余裕な
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