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王道を走れば:幻想にて
第五章、2の3:エルフとの離別
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ベリ殿を新たな長老として迎えることに賛成の方は、赤の欠片を。反対の片は青の欠片を投じて下さい」

 間髪入れずに赤の欠片がひうと飛び、からんと音を立てながら部屋の中央に落ちた。ついでまた赤色が飛ぶ。また赤が一つ、二つ、三つ......。イル=フードが情けとばかりに青の欠片を放るも、趨勢を占めた赤の軍勢に跳ね返され中央にすら入れやしなかった。
 当然の結論であった。投じられた青の欠片はたった一つ。ニ=ベリ派の賢人、そしてソ=ギィは考えるまでもなく赤の欠片を投じた。イル=フードと親睦がそれなりにあった他の賢人ですら、赤の欠片を投じている。水面下の工作を疑いたくなるほどの圧倒的な投票差に、イル=フードは頑として表情を変えず、ただ眼前の結果を受け入れていた。  

「決まったな」「ああ。では早速ーーー」
「待たれよ。まだ騎士殿が投げられておらん。事はその結果だけではなく、過程もしっかりと受け止めねばならぬ。それが賢人としての義務だ......さぁ、アリッサ殿」

 賢人らの視線が、王国の美麗な女騎士に注がれた。焦げ茶色の髪に隠された深緑の瞳。どこを見詰めているのか、あるいは何を想っているのか。顔を覆う影のせいでそれが他者に窺い知れることはないだろうが、憂鬱げに唇が垂下しているところまでは隠すことができなかった。
 傍に控えていたキーラが、「アリッサさん」と優しく声を掛けた。それを聞き入れてふと自分の立場を思い直したのか、「......ああ」と沈みがちに返しながらアリッサは小皿に手を出す。からからと欠片が触れ合う。他の賢人の従者も気になるようで、幾人かは視線をそこに向かわせていた。
 アリッサは欠片を掴むと、それを力無く投じる。宙を舞う色を見て誰かが鼻を鳴らした。『まぁ、そうだろうな』と言っているのだろう。欠片の群れの真ん中に、空から新たな欠片が落ちてきた。赤の軍勢に援軍が加わった。

「賛成多数。結果は出ました。これより賢人会議は新たな長老としてニ=ベリ殿を迎えたいと存じます」
「試練を乗り越えたエルフに栄誉あれ。偉大なる巫女様に栄誉あれ」
『栄誉あれ』

 賢人は全ての議題を裁可した。会議が終わり、賢人らは従者を連れて館を出て行く。春の訪れを感じさせる柔らかな陽射しはまるで彼等の心境を現しているかのようであった。
 きしゃりと雪交じりの地面を歩む。王国を代表して会議に出席した二人も仲間の下へと歩いているが、その足取りは重い。本来ならばアリッサの隣には別の人物が立っており、キーラも会議に出席する事は無かった。だがそうならなかったのはその人物が今も行方知れずとなっているからであり、アリッサの気落ちはここから来るものが大きかった。

「アリッサさん。今、大丈夫ですか」
「......ああ」

 エルフの集落に差し掛かる手前で、
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