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王道を走れば:幻想にて
第五章、2の3:エルフとの離別
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たのだ。『防腐』が切れていてな、蛆がうようよと湧いていてとても目が当てられなかった。だが私の手にかかれば肉体の再現は難しくとも、骨格の再現程度ならできる。
 どうして私がこれを見付ける事ができたのか。......私は自分の血について一考せざるを得なかった。なぜ私の一族は皆、魔術に長けていたのか。なぜ誰もかれも、全うとは言えぬ汚れた嗜好を持っていたのか。きっとうそうだ。狂王に仕えていた時からその支配を受けていれていたのだ。資質や血、そして子孫を残す力に至るまで。そうに違いない」
「お前は何を望んでいる、マティウス」
「勘づいているだろう?狂王の復活だ。これまでの私はすべてが矮小だった。魔術の昇華という陳腐な望みや好奇心に翻弄されていた。だがそれらを凌駕する最高の欲求を得た!私の死霊術によって狂王を完全な形で復活させる。そのためには、すべての秘宝が必要だ。彼の復活に相応しい最高の生贄もそうだ!
 復活には儀式と、儀式のための道具が必要だ。私の手元には一つの秘宝がある。この錫杖だ。あと必要だと分かっているは義眼、首飾り、そして生贄だ。お前の協力を得られればそのうちの二つが一度に手に入る」
「二つ?首飾りだけじゃ......まさか俺か?」
「異界の人間は『セラム』の常識を覆す。狂王もかつてはそうであった。これ以上に相応しい生贄はいないだろう」

 やはりというべきか。この老人は手段にかかる善悪に拘泥することは一切無い人物だ。下手な期待は必ず裏切られるだろう。
 つかつかと台座に向かって歩いていくのを見て、慧卓はそれとなく手足の拘束を確かめる。鋼鉄が塗り固まっていると思えるくらいに頑強だ。ちょっとやそっとの力では動じないだろう。もし首飾りの魔力に身を任せた場合には、あるいはどうだろうか。
 マティウスは近くより狂王をしげしげと見ながら言う。

「私はこれから儀式の準備に取り掛からねばならん。部下に義眼を追わせてはいるがあの小僧はそう簡単には捕まらんだろう。元はと言えば死体だからな、頭もそう回るものではない。私が直接探してもいいのだが、この身は老いているゆえ時間が惜しい。
 そこで協力を申し出たい。私の新しい部下となれ。私の手としてチェスター=ザ=ソードを追い、義眼を奪ってこい。持って来た暁にはお前の胸から首飾りを外し、お前の代わりに新たな生贄を探すことにしよう」
「断る。首飾りは、もう俺の身体の一部になっちまった。外したいが、下手に弄られたら死にそうだ。それにお前に協力すること自体が気に入らない。なぜだか知らんが、覚えているんだ。遺跡から『転移』する寸前の、お前の醜悪な顔をな」
「その解答は想定の範囲内だ。そこで第三の質問だ。この少女は、誰だと思う?」

 マティウスは台座を掴んでゆっくりと横に回転させる。ずずずと石が擦れ合う。腐った
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