第百話 運命
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細に、そして臨機応変に動かすことができるのかは言うまでもない。
「なんで、そうまでして戦うんだ!クラウ、アンタは自分が戦う人間じゃないって、そう思ってたんじゃないのかよ!!」
『そうさ、俺は決して戦士でもなければ兵士でもない。戦う人間としては二流三流のくだらない有象無象の人間だ。だけど、戦う理由なら存在する……死ぬためさ』
その言葉を聞いた全員が驚愕した。それは当然の反応だろう。誰だって目の前にいる相手が死ぬために戦うなどと思うはずもない。
死にたいなどと思っているのであればそれこそ自殺すればいい。死に場所を探しているなどというのであれば機械などに脳をつなぐ必要などない。矛盾した考え方に誰もが言葉を失った。
「どういうことだよ、それは!?」
この場で最もクラウに親しいであろうシンは叫ぶように尋ねる。
『俺はいつまでこの幻想に生き続ければいい。まるで生きている実感の湧かないこの空想を、空虚とも言えるこの世界を――――ここに俺の欲するモノは存在しない。なら、生きている価値など一片たりともありはしないだろう』
質問に対して訳の分からない回答を言う。目の前にいるのは一体誰だ?シンはここにきてクラウという人物像が歪んでいるように感じた。
『そんな歪んだ考え方で一体何を――――錯乱しているようにしか見えない!』
キラが叫ぶ。まるで人が変わったかのような急な変化について行けない部分はあるものの、その考えが歪んでいる事だけは確かだとキラにはそう思えた。
『錯乱している……ね? 今俺にそう言ったのかい?その台詞はナンセンスだよ。生憎俺は、生まれた時から正気じゃないんだ』
クラウ・ハーケンという人物は、自覚の薄い今の異常な精神性を除いて、凡な枠を超えることのない人間だ。そんなことはないという意見は生まれ出るだろう。事実、彼は多くの機体を生み出し、高い操縦性能を持ち得ている。
しかし、それは結局非凡の才を持つ証明になどなりはしない。彼の生み出した技術は言ってしまえば総てが模倣に過ぎず、彼の操縦技術は才能のない人間が努力で辿り着く位置なのである。
『でも、だからといって狂気に囚われているわけじゃない。いつだって俺は枠を超えない人間だ』
神というものに出会い、転生の対価に受け取った特典は総てが己の才覚の限度に合わせたものでしかないのだ。何故、己の枠を超える願いを持たなかったのか?欲が無かったわけでも、自分の才能に絶対の自信があったわけでもない。ただ単純に恐怖していたからだ。
神から受け取る異形の才――――それが自身を呑み込むものであると何故考えつかないといえる?他者から、正確には上位者から受け取って果たして己という自我は崩壊を起こさないといえるのだろうか?
小心者であったクラウ・ハーケンは自身の枠を
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