番外6話『航路にて』
[1/9]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
巨人島リトルガーデンを出た一行は静かな波を進んでいた。
「みんな俺はな! いつか絶対にエルバフへ! 戦士の村へ行くぞ!」
「よし、ウソップ! 必ず行こう! いつか巨人たちの故郷へ!」
すっかり巨人に魅せられたルフィとウソップが肩を組んで「えーるばふばふー」とわけのわからない歌を陽気に口ずさみ、その傍らでビビとナミへとサンジがおやつを差し出す。もちろんその一見して美味しそうなおやつをルフィとウソップが見逃すはずもなく「んまほー」と涎を垂らしてはサンジに「おめぇらの分はキッチンだ」という言葉を投げられてキッチンへと走り行く。
ゾロは一人で自作したらしい筋力トレーニンググッズで素振り。
「2603……2604……あのロウさけ斬れてりゃ誰を手間取らせることもなかった……甘ぇ」
激しく息を乱し、一心不乱に素振りを続けるその姿からはリトルガーデンにあった自分の情けない姿に対する憤慨が見られる。
いつも通りといえばいつも通りともとれる麦わら一味のメリー号。だが、一人だけ船上に見当たらない姿があった。
ハントだ。
彼の姿は船上にはなく、船室に。
一人船室にこもり、目を閉じて正座を組んでいるその姿で瞑想でもしているのか、ただ静かにそこに佇んでいるだけで動き出す気配すらない。ハントは空手家なのだからそういう瞑想という精神修行もある、と言われればなんとなく納得できなくはない気もするが、その割には目を閉じている彼の表情がどこか鬼気迫るものがあり、現在筋力トレーニング中のゾロに通じるなにかが感じられる。
「……ふ〜」
一つ大きな息を吐き出して、彼はリトルガーデンでのことを思い出していた。
――俺は弱い……心が弱すぎる。
歯を食いしばる音が狭い一室に響く。
苛立ち、悔しさ、情けなさや怒り。ハントが他の誰にでもなくただ自身に対して抱いている感情が船室に滲む。
まず思い出されるのは巨人を倒した瞬間のこと。
どうにか巨人の二人を倒したハントがまず思ったのは安堵の気持ち。いわゆる、ホッと一息をつき、油断した。その瞬間をMr.3に狙われて囚われてしまった。
もちろんブロギーに何度も何度も踏みつぶされたおかげで、大きなダメージを抱えてしまっており、瞬間的に素早く動くことができなかったせいもあるが、そもそも油断しなければ囚われることはなかった。
まず、これがハントが自身に苛立ちを覚えている理由。
そして。
――ゾロのあれ。
例えば自分の足が固定されているから、といって自分の足を両断してまでも自由を得て、そして敵を倒そうなどという考えが思いつくだろうか。
普通は否だ。
それを、ゾロは実行しようとした。
少なくともハントには思い浮かびすらしなか
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ