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ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
番外中編
蒼空のキセキ
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 美しい青空。
 薄ガラス一枚隔てただけのそれは手を伸ばせば届きそうだった。

 どこまでも澄んでいて、どこまでも広がって。
 どこにでもつながって、どこへでも行ける。

 そんなことを感じさせる、輝くように眩しい空と、それに浮かぶ……

 「―――さん。窓の外に、何か見えるのですか?」

 見惚れていたせいで、まったく呼びかけに気が付かなかった。

 「牡丹さん。……すみません、聞いてなくって」
 「いえ、構いません。随分と楽しそうでしたので、僭越ながらお声をかけさせて頂きました」
 「あ……笑って、ましたか……? 私……」
 「ええ。宜しければ、理由を聞いても?」

 なぜかは分からないけどいつも私の病室を訪れて、とってもよくしてくれる和服の女性……牡丹さんが言った。その恭しい、けれども親しみを感じられる声が、私の心の中に眠る夢を、思い起こさせる。心地よく、きらきらした、そんな夢。

 そう、それは……

 「……はい。……あの雲、階段みたいで、ずっと上まで登れそう、って」

 くっきりと魂に刻まれた、空色の少女の姿を映す夢。





 「っやっ!!!」

 肺の中の空気全部ぶちまけるくらいの気合を込めて、両手の剣を振り下ろす。きらきらと陽光を反射する両刃の大剣は、その重さを生かして大柄な相手をナナメに両断する。直立歩行するクマに革製のヨロイを着せたような、ダークくま吉くんとでも言うべき相手は、実にモンスターらしい悲鳴をあげて仰け反る。残りHPはおよそ3割……もらった! 

 「もらったあっ!」

 思考をそのまま声に出して、振り下ろした剣を脇に構える。
 夕方に相応しい炎のような赤色を纏っていた大剣は、一転して青い光を放ち始める。

 両手剣単発ソードスキル、『ラインディア』。

 「悪のくまさんめっ! その首もらったあっ!!!」
 「グルアアァッ!!!」
 「おい馬鹿っ!」

 後ろから聞こえた声と、びっくりベアくんの叫びはほとんど同時だった。

 しまった。思ったより大剣の強攻撃の威力が足りんかった。
 私の予想より短い硬直を終えたクマ太郎は、スキルを放つ前の隙に両手を大きく振り上げる。

 (……あ、やばっ……)

 タラリ、と汗がこぼれる。
 あの構えは、どう見ても両手での二連撃。対するこっちはソードスキルとはいえ、単発。

 2引く1は、1なのである。

 「うにょえええ!!?」

 しかし止めるわけにはいかない。止めれば2引く1が1なのと同じように、2引くゼロが2になるだけである。さっきのばっちり決まった掛け声とは正反対の、自分でもよく分からない声を上げたまま私の腕が、システムアシストに従って振り抜かれる。

 相
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