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久遠の神話
第八十四話 運が持つものその九
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「それは最悪の手段だ」
「戦争自体が」
「戦いもだ、手段として今も行っているがだ」
「戦いを行わずに済むのなら、なのね」
「それに越したことはない」
 これが権藤の考えだ、彼は智子にこうも話した。
「話し合い、交渉で済めばいい」
「理知的ね」
「戦いは常にリスクを伴う」
 合理的なままにだ、語る権藤だった。そこには確かな理知も見られる。
「それをわからずして政治を、経営を行うべきではない」
「見事ね、いい考えだわ」
「貴女の考えにも合っているか」
「戦いは避けられるのなら避けるべきよ」
 アテナであるが故にだ、智子はこの考えのままでいた。そしてその考えのまま権藤の顔を見て冷静な口調で語るのだった。
「絶対にね」
「そういうことだな」
「そう、貴方もそうした考えでよかったわ」
「ただ。私は合理的に言っているだけだ」
 それだけだというのだ。
「貴女は自分の良心から言っているがな」
「経営者、そして政治家としてなのね」
「どちらも時として非情になるものだ」
 それが経営者であり政治家であるというのだ。
「だからだ」
「貴方は合理的だというのね」
「争いによるエネルギーは膨大でリスクも伴う」
 このことを考えればというのだ。
「そうしたことは避けるべきだ」
「確かに私とは違う考えね、けれど」
「それでもか」
「戦いを避けられるのなら」
 それならとだ、智子はそのこと自体にベストを見出して語るのだ。
「それでいいわ」
「そういうことか」
「では今日よ」
「今日の十二時に新神戸駅だな」
「そこに来てね」
「必ず行く」
 これが権藤の今の返答だった。
「そして手に入れる」
「そういう気持ちでいることよ」
「そしてもう一人の女神はか」
「どういった怪物を出して来るかはわからないけれど」
 だがそれでもだというのだ。
「あの方は必ず仕掛けてくるわ」
「あの女神も焦っているか」
「随分とね。あと少しだから」
「力が集まるのだな」
「集まれば」
 それでだというのだ、智子もまた。
「想う相手と共にいられるのだから」
「愛か」
「愛は時として神も人も狂わせるわ」
 ギリシア神話では特に描かれるものだ、そこにある狂気は愚かしくもあり悲しいものである。今のあの女神も然り。
「それ故にね」
「そういうことだな」
「貴方は狂わないのね」
「妻も子もいる、しかしだ」
「それでもなのね」
「そこまで強いものではない」
 彼の人への愛情、それはというのだ。
「普通か」
「普通だと、というのね」
「そこまではしない」
 誰かを倒してまで手に入れる様なことはだ、決してだというのである。
「私はな」
「けれど権力は」
「権力は手に入る」
 このことについても素っ気
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