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早過ぎた名将
7部分:第七章
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野手出身者には多い。仰木もそれは大体同じである。だからこそことあるごとに対立したのだ。
「ピッチャーは確かに重要だ。だが野球はそれだけでは勝てない」
 近代野球はそうである。ピッチャーだけで勝てる時代はもう終わったのだ。
 まずピッチャーを支える守備。エラーが少ないだけではない。守備範囲の広さ、脚、肩、連携。そしてシフト。それだけに留まらない。
 攻撃における機動や連打、打つポイント、近代野球は頭脳なのだ。
 山田もそれはよくわかっていた。だからこそ監督になった時にそうした面を指導できるスタッフを集めたのだ。しかしこの時それを最もよくわかっていた男が一人いた。それがバレンタインであった。
「それだけでは駄目だ」
 バレンタインはそこにプラスアルファを付け加えたのだ。
 それは何か。バレンタインは答えた。
「モチベーションだよ。選手の気持ちを高めることが何よりも重要なんだ」
 彼は言った。そしてロッテの選手達を見てこう言った。
「彼等は決して弱くはない。少し気持ちを切り替えたら凄く強くなることができる」
 そしてその通りになった。
 彼の采配は確かに見事だった。ロッテナインはそこに近代野球を見た。しかしそれに留まらなかったのだ。
 彼はこう言った。
「このシーズンここまで気持ちよく野球ができたのは君達のおかげだ」
 と。だがナインはそれに対してこう言った。
「いえ、それは俺達の台詞です」
 彼等はバレンタインの言葉をそのまま彼自身に返したのだ。
「このシーズン、本当に最高の状態で最後まで戦えました。全部監督のおかげです」
「有り難う」
 バレンタインはその言葉に感謝の言葉を述べた。
「来年も君達と一緒に野球がしたいな」
「はい」
 それはロッテナイン全ての願いであった。
 だがそれは適わなかった。バレンタインはこのシーズン限りで広岡ゼネラルマネージャーから解任された。
 実は広岡は来年も彼に監督をやってもらうつもりであった。文句を言うつもりは一切なかった。
「私の仕事はまた別だ。総合的なことをやっていればいい」
 そういう仕事がやりたかったこともあった。ゼネラルマネージャーという仕事が気に入っていた。日本ではじめてということも彼のプライドをくすぐっていた。
 しかしここで問題が生じた。コーチ陣とバレンタインの軋轢を知ったのだ。
「それは本当か!?」
 広岡は自分のところに直訴に及んだ彼等に対して問うた。

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