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早過ぎた名将
4部分:第四章
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打を浴びさらに頭に血が昇っていた。
「これは交代か!?」
 ロッテファンもそう思った。バレンタインがベンチから出て来た。
 だが彼はヒルマンを下げなかった。
「落ち着け」
 彼は微笑んでヒルマンに対して言った。
「ボールはいい。落ち着けば何ということはない」
「監督」
 ヒルマンはバレンタインの言葉に次第に落ち着きを取り戻してきた。
「まだいける、安心していけ」
「わかりました」
 ヒルマンは彼の言葉で落ち着きを取り戻した。
 これでヒルマンは立ち直った。以後オリックス打線を何なく抑えていく。
「三点に抑えてくれれば上出来だ」
 バレンタインは先発投手に対してそう考えていた。
「打線は四点取ってくれればいい。それで勝てる」
 単純な様だが難しい。だが彼はそれができるように選手達のモチベーションを高めることが上手かった。
 ロッテは諦めてはいなかった。昨年までだったらこれで諦めていただろう。だがこの年のロッテは違っていた。
 オリックスのマウンドには佐藤がいる。四十一歳のベテランだ。武器である独特に落ちる球ヨシボールを駆使してロッテ打線を寄せ付けない。四回に林のソロホームランを浴びただけであった。
「これは打てないな」
 ロッテベンチはそう考えていた。だがその眼は死んではいなかった。
「絶対チャンスは回ってくる」
 そう思っていた。ただオリックスの隙を窺っていた。
「佐藤はええな」
 オリックスベンチでは仰木は黙って彼の投球を見ていた。
「だがそろそろやな」
 試合は終盤に入っていた。七回のオリックスの攻撃だ。
「どう思う」
 彼はここで投手コーチを勤める山田久志に尋ねた。
「佐藤ですか」
 見たところ佐藤の投球は全く問題ない。
「疲れは見えへんか」
「そうですね」
 佐藤は四十一歳である。流石にそれは隠せない。
「続投させるべきやと思います」
 山田は答えた。
「続投か」
 だが仰木はその言葉に顔を曇らせた。
(まずいな)
 山田はその顔を見てすぐにそう思った。
(監督は焦っている。少しでも早く勝ちたいな)
 普段の彼ではなかった。明らかにソワソワしていた。
「平井は大丈夫やろな」
 そしてここで守護神平井の名を出した。
「終盤だしそろそろブルペンで出来上がっているやろ」
「それですが」
 山田はその眉を少し顰めさせた。
「どうした」
 仰木はそれに気付いた。
「もう少し後でもいいのではないですか」
 七回だ。肩が出来上がるにしろもう少し先だ。それに。
(今日の平井は固くなっている)
 彼もまた優勝を意識していたのだ。山田はそれを敏感に察知していた。
「あの、やはりここで平井を出すのは」
「駄目か!?」
 仰木は顔を顰めさせた。
(これだから投手コ
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