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早過ぎた名将
2部分:第二章
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戸で優勝だ」
 彼等はそれだけを考えていた。
「ふむ」
 バレンタインはその様子を冷静に見ていた。
「動きが固くなっているな」
 オリックスナインの動きを一目見て呟いた。
「選手だけじゃない。監督やコーチまで固くなっている」
 仰木も投手コーチとして投手陣を支えている山田久志もだ。バレンタインには手にとるようにわかった。
「これは攻略できるな」
 彼は悟った。そして記者達との話に向かった。
「監督、今日はどうですか?」
 バレンタインは記者達からも評判であった。
「そうだね」
 彼は明るい笑顔で応えた。そして椅子に座りつつ朗らかに報道陣に対し話を続けた。
 そして試合開始の時間がきた。オリックスの先発は野田、ロッテは伊良部秀輝である。
「やっぱり伊良部できよったわ」
 一塁側を埋めるオリックスファンは彼の姿を認めて言った。
「また今日もえらい球投げよるで」
 伊良部といえば剛速球である。一五八キロを記録したこともある剛球が最大の武器だ。
「そうそう簡単に勝たせてくれる気はないみたいやな」
 神戸市民は彼の姿を見て溜息混じりに言った。
 その日の伊良部は特に凄かった。八回までオリックス打線を僅か三安打に抑える。頼みのイチローも八回にようやくヒットで出塁するのがやっとだった。しかも後続は全く期待できない状況であった。彼の剛速球の前に為す術もなく三振の山を築いていく。全く打てる気がしなかった。
「あかんわこら」
 神戸市民は溜息を出した。
「見てるこっちが感心する投球や」
 その通りであった。将にエースであった。
 ロッテは四回に林博康のソロアーチが出た。今日の伊良部にはそれで充分であった。
「ナイスピッチング」
 バレンタインは八回まで無得点、十三奪三振に抑えた伊良部を讃えた。伊良部はそれを微笑みで受けた。
「有り難うございます」
 九回になるとバレンタインは伊良部を降板させた。調子は落ちていない。
「投球数を超えた」
 だから降板させたのだ。伊良部もそれは納得した。
 まずは成本年秀、そして河本育之、このリレーでオリックスを何なく抑えた。このシーズンのロッテを象徴するのはこの中継ぎ、リリーフ陣であった。
 近代野球において中継ぎ、リリーフの重要性は言うまでもない。ロッテはそれを忠実に守ったのだ。
 オリックスは敗れた。結局伊良部を筆頭とするロッテ投手陣に抑えられた形となった。だが実際はそれよりも複雑で深刻な問題を抱えていた。

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