第七章
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程の馬鹿か、その逆にとんでもない野球センスの持ち主やないと出来ん事やな」
野村はそのスリーベースを見て言った。古田の心は明らかに燃え盛っていた。
その炎を消す事は誰にも出来なかった。彼は再び突入する。
次のバッター広沢はピッチャーゴロだった。だが打球が思いの他強くピッチャーの頭を越えた。打球はショートまで向かった。
打球を捕った時田辺は驚愕した。何と三塁ランナー古田がホームへ向けて突入していたのだ。相手の虚を衝く走塁は西武のお家芸であったがその彼等ですら我が目を疑う古田の走塁であった。
古田はホームを陥とした。これで貴重な追加点が入った。狂喜する古田とヤクルトナインを西武ナインは呆然と見ていた。
「何という奴だ。あの場で突っ込むとは」
森は呟いた。そして彼の名を脳裏に焼き付けた。
森は後に横浜の監督となり古田と再び対峙する。しかし自慢の知略をことごとく打ち破られ一敗地にまみれる。そして彼は横浜の監督を去る事となった。
この一点は貴重だった。古田の信じられない走塁によって得た一点、これはヤクルトにとって待ち望んだものであったのだ。
後はこの二点を守りきるだけである。野村はマウンドに高津を投入した。彼はこのシリーズで西武に一点も許さず二セーブを挙げている。最早西武に反撃の芽さえ与えぬつもりであった。
九回裏西武の最後のバッター鈴木健のバットが空を切った。勝負はこれで終わった。
ヤクルトナインがマウンドに駆け寄る。そして互いを抱き締め合う。野村がシューズに履き替えマウンドに向かう。そしてナインが彼を胴上げする。
「感謝、感謝、感謝です・・・・・・」
最後のインタビューで彼は言った。二年越しの長い戦いだった。しかし彼等はようやく王者西武に勝ったのだ。
ナイン達が三塁側のファン達の方へ向かう。彼等もまたヤクルトの日本一を信じ神宮から駆けつけてきたのだ。
古田が、飯田が、池山が、広沢が、秦が、ハウエルが。そこには荒木も西村も高津もいる。第四、第七で力投した川崎はシリーズMVPにも選ばれたかって弱小と馬鹿にされ続けたヤクルトが偽りの王者巨人はおろか他のどのチームも為し得なかった王者西武の打倒を果たしたのだ。これ以上の喜びがあろうか。
かっての弱く笑い者であったスワローズ。それが日本一になった。九二年のシリーズがはじまった時まさか今この場で勝利の喜びに包まれると誰が想像したであろうか。
野村ID野球だけではない。選手の勝利への執念が日本一を呼び込んだ。荒木の力投、ハウエルの怒りの一打、池山の犠牲フライ、飯田のバックホーム、川崎の好投、高津のリリーフ、広沢のヘッドスラィディング、そして古田の走塁。皆心の奥底から勝利を願った。そしてその為に一丸となった。その結果の勝利であった。
マウンドのところで記念撮影が
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