第五章
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第五章
第五戦、ここで負ければ西武は全てが終わる。ヤクルトは悲願の日本一だ。野村には余裕が見られた。だが森の顔はまさに決死の様子であった。
ヤクルトの先発は宮本賢治、右のアンダースローの変則派である。対する西武の先発は工藤。第一戦で打ち崩されているがここは彼のマウンド度胸にかけた。
西武は二回に清原がこのシリーズはじめてのアーチを放つ。これで西武が先制した。
ヤクルト打線は執拗に工藤を狙う。しかし彼も幾多の修羅場を潜り抜けてきた男である。それを寄せ付けない。鹿取にスイッチし西武は逃げ切りを図る。
だがヤクルトは本拠地での胴上げ果たさんとする。八回裏広沢がタイムリーで一点を返す。
それでも西武は逃げようと必死である。遂に追いすがる燕に獅子が牙を剥いた。
九回、満塁の状況でバッターボックスに立つのは鈴木健。彼のバットが一閃した。
打球はスタンドに叩き込まれた。満塁ホームランであった。試合はこれで決まった。
終わってみれば七対二、西武の大勝利であった。王者の貫禄を見せ本拠地での胴上げを狙うヤクルトを退けたのであった。
「これで所沢まで首がもったな」
森は安堵した声で言った。そして彼は本拠地である西武球場へと帰っていった。
次の日は移動日、そして試合は三十日に行なわれる予定であった。
だが雨が降った。試合は一日遅らされることとなった。
「この雨がどう出るかな」
二人の将は呟いた。この雨が両者に対し少なからず影響を与える事は明らかであった。
だがそれが吉と出るか凶と出るか。それは神のみぞ知っている事であった。
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