暁 〜小説投稿サイト〜
Cross Ballade
第3部:学祭2日目
最終話『交差譚詩曲(クロスバラード)』
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嬉々としている。
 これで、いいのかどうか……。
 そう思いながら、誠は組んでいないほうの腕で、杖をつきながら歩いていく。
 ところで……
 どうもさっきから、殺気のこもった視線を感じる。言葉が豊満な体を押しつけてきても、どうも安心できなかった。

「誠君」
 言葉が神妙な顔で話しかける。
「?」
「元気ないです。
怪我もしてますし、疲れも残ってるんですか?
あるいは平沢さんを振ったことを、まだ気にしているとか」
「そういうわけじゃないけど……。ずっと誰かに見られている気がして……」
「ストーカー……というわけではないですよね。平沢さんはそういうことをする人には見えないし……。そうそう、心には一緒にフォークダンスを踊れなくなったと連絡しなきゃ」
ストーカー……そんなことをされるほど、やましいことはしていない気もするが。
 
 静かに、小ぢんまりとした家の中に入る。
 すると、母がさびしげな表情で、ぼんやりと明かりのともるリビングにいた。
「母さん……」
「だけじゃないわよ」
 母の指さす方を向くと、いたるが何も知らないとばかりに、元気にリビングを走り回っている。
 ドタドタという音がひどく、そのため、玄関のかぎが解除されるゴチャッという音が、皆には聞こえなかった。
 いたるは今回起こったことを、何も知らないようだ。
 でも、それでいいんだ。
「誠……足、どうしたの?」
「ああ、親父に突き落とされてけがしたんだけど、大したことはないさ。ただのねん挫」
「あの人が……。そう。あの人も、逮捕されたそうね」
「……どうしてそれを?」
「琴吹さんという人から聞いてるわ。……でも、これでよかったのかもしれないわね。
もう2度とあの男に襲われる人がいなくなるわけだし。
琴吹さんは、襲われた人には最大限ケアすると言ってたけど」
 暗い微笑みを浮かべる母に対して、誠は、
「……そうだな。もう親父に迷惑を被る人はいない。
それに、これからいたると一緒に暮らせるんだから、それでいいのかもしれないな……」
「琴吹さん、マスコミが必要以上に騒ぎ立てないようにするって言ってたけどね……」
「まあ、この先取材が来ても、堂々としたほうがいいな」
「私も何とかしますので、誠君も、お母さんも元気出してください」言葉が2人の間に入って、「いたるちゃんが感づいちゃったら、まずいでしょう」
「あ、ああ」
「そういえば」母は、一番聞いてほしくないことを聞いてきた。「唯ちゃんは、どうしたの?」
唯の泣き顔が浮かび、誠は思わず黙ってしまう。
「……そういうことね。」母は彼の隣の言葉を見て、全てを理解したようだ。「結局貴方は、言葉さんが……」
「ねーねーおにーちゃ!」いたるが母の声を遮り、無邪気な笑顔で誠に聞いてくる。「おとー
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