第3部:学祭2日目
最終話『交差譚詩曲(クロスバラード)』
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て、ケーキ食べましょうよ」
「……」
唯はぎこちない笑顔を浮かべながら、ケーキを取ってくる。
そのまま、黙々とケーキを食べ始めた。
みな、不安げな視線で彼女を見る。
「唯、さみしいのは私も同じだからね」隣の澪は、息をついて真顔で、「言葉が伊藤のところへ行ってしまったし……それに……」
「それに?」
「私の初恋も、終わっちゃったから」
急にぼんやりした表情で、澪は窓の方を向いた。
窓には、高層ビルが並び立ち、七色のイルミネーションが至る所で輝いている。
「澪ちゃん、どうしたの……?」
心配げな表情で、ムギが聞いてくる。
唯ははっと気づいて思わず、囁いた。
「もしかして……澪ちゃんも、マコちゃんが……?」
すると澪は、顔を赤らめ、うつむき加減でうなずく。
皆、少し仰天の表情になる。
「でも、言葉のことがあるし、本人の前では言えないさ……」
そう呟いて、澪は猫背でうなだれてしまった。
そうか。
彼女もずっと、我慢していたんだ。
そう思うと、次の瞬間、
『私、誠を好きになったこと、後悔していないからね!』
と言う声が頭に思い浮かんだ。
そうだ。
2人とも、思いを我慢して……自分の思いに決着をつけてたんだ。
「澪ちゃん!」唯はギュッと澪の肩をつかみ、「私、決めたから! もうマコちゃんのことで泣かないって!! だから、澪ちゃんも元気出してくれる?」
「唯……」
ポカンとする澪だが、唯は真剣な思いであった。
「ね! もう泣かないから!!」
赤い頬、赤い目でじっと澪の目を見つめる唯に対し、
「ありがとう。でも、気を遣わなくていいんだ。私が勝手に抱いた思いだから」
思わずぎこちない笑顔で、澪は答えた。
「うん……。じゃ、思い切って食べて食べて楽しもう!!」
急に元気を出し、唯は声を張り上げる。
「何ですか唯先輩。さっきまでずっと泣いていたくせに」
「そうね。甘い物をたくさん食べれば、嫌なことも忘れるでしょう」
半分呆れ顔の梓に対して、ムギは穏やかな表情で答えた。
「じゃあ、律には悪いけど、楽しむとしますか」
再びケーキを取ってきて、皆皆食べ始めた。
唯は、榊野の方角の街を見て、独りごちた。
「マコちゃん……これからも、友達として付き合っていけるよね……」
家の灯りが、街並みをともしていく。
誠は言葉と腕を組みながら、自分のマンションの廊下を歩いていた。
足にねん挫をしていたので、3組の学祭実行委員会も同級生達も、早めに帰してくれた。
自分の選択が正しかったのかどうかはわからない。ただ、少なくとも唯は、あれからずっと泣き続けていた。
言葉は、彼が作ったブローチと指輪をはめている。
自分が選ぶことを決めてから、ずっと
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