第三章
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第三章
ヤクルトファンで埋め尽くされた神宮球場、そこで両チームの先発メンバーが発表される。
西武の先発は渡辺久信、これはある程度予想されていた。対するヤクルトは伊東であった。
「今日はもらった」
森は先発の名を聞いた時言った。そしてナインに自分の作戦を伝えた。
「・・・・・・いいな、思いきっていけ」
「はい」
ナインは彼の言葉に頷いた。そしてグラウンドに散っていった。
西武の先発渡辺が荒れ気味のストレートが武器である。コントロールが定まらないがそれがかえってヤクルト打線を苦しめる。
「渡辺は抑えてくれるな」
森は彼に対しては安心して見ていた。そして問題の作戦である。
この日の伊東の調子は悪くなかった。だが森は彼の投球データから作戦を割り出していた。
変化球が多い。カーブ、シュート、フォークと多彩である。とりわけ内角攻めが強い。
彼はその内角攻めの球を棄てさせた。そして初球から積極的に打たせたのだ。
作戦は成功した。伊東は三回に六失点を許し降板した。これで試合は決まった。
渡辺は荒れながらもヤクルト打線を押さえる。二失点ながら二安打しか許さなかった。彼から潮崎にリレーし試合を進めた。西武はさらに一点を追加し七対二で勝利を収めた。
「あいつもやりおんの」
野村は三塁側ベンチにいる森を見て言った。森は彼が自分を見ている事に気付いたがあえて気付かないふりをしてベンチを後にした。
「わしに腹のうちを読ませんつもりか。けれどそうはいかんで」
二人はその脳裏にこれからのシリーズの行方を浮かべていた。そして策を練っていた。
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