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剣の丘に花は咲く 
第十一章 追憶の二重奏
第三話 決心と決意
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「わたくしは……シロウさんが好き」
「…………」

 黙り込んだルイズに向かって、アンリエッタは止めることなく続けて言葉を向ける。

「ただ、寂しいだけだと、頼れそうな人なら誰でも良かったのではと……そう、思って……いいえ、思おうしていました。でも、やっぱり違いました」

 胸の上……心臓の上に手のひらを当て、自身の鼓動を聞くように目を閉じながら、アンリエッタは告白を続ける。

「ただの思い込みで、名前を口にしただけで胸が苦しくなったりはしません。彼の事を思い出すだけで、鼓動が早くなるわけがありません。触れられた事を思い出し、身体が熱くなったりはするはずがありません……」
「……そっか」

 ルイズの小さな声は、アンリエッタの耳に届くほどの大きさではなかった。口の中で呟かれた言葉。聞こえる筈がない。事実、アンリエッタはルイズの声を捉えてはいなかったが、しかし、ルイズの呟きと共にアンリエッタの告白は止まった。アンリエッタはルイズを見つめる。
 アンリエッタは戦々恐々の思いでルイズを見つめていた。唯一と言っていい親友の使い魔であり恋人でもあるだろう人のことを、本人の前で好きだと告白。殆んど狂った? と言うような所業だ。今すぐこの部屋から逃げ出したいとの思いに駆られながらも、アンリエッタは必死にそれに耐え、ルイズの反応を待つ。以前『好きにしたら?』とのような事を言われたが、だからと言って安心できるものではない。というか安心できる奴がいたらただの馬鹿だろう。
 じっとりとした嫌な汗が背中に吹き出て、服が背中にくっつく。微かに震える視界でルイズを見つめる中、ルイズの口が動き出す。緊張で張り詰めた意識の中、アンリエッタの視界にゆっくりと開かれるルイズの口が映る。

「……わたしも、シロウが好きです」
「…………そうです、か」

 想定していた反応をどれも見せないルイズに対し、アンリエッタは気の抜けた声を漏らした。呆気に取られたようなアンリエッタの声を受け、ルイズは苦笑を浮かべる。

「わたしも、シロウが……好きです」
「……そう……ですか」
「「……………………………………………………」」

 ルイズとアンリエッタは視線を合わせると、同時に黙り込んでしまう。至近の距離で互いの目を見つめ合いながら、押し黙る二人の少女。何度となく何かを言おうと口を開きかけるが、しかし口は開かれることなく二人は押し黙っていしまう。互いに喉まで上がってくる言葉を何度も押しとどめるため、時折沈黙の中に何かが詰まったかのような低い声が部屋に響く。その度に自分を笑うかのように苦笑を浮かべる二人であったが、

「―――っふ」
「―――あはっ」

 最初に二人の口から溢れたのは言葉ではなく、笑い声であった。

「ははっ、はは
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