第十一章 追憶の二重奏
第三話 決心と決意
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……っ」
ガクリと肩を落とし乾いた笑みを浮かべる士郎を、苦笑しながら見ていたカトレアは、ふと何かに気付くと士郎の頭に向かって手を伸ばした。ポスンと白い髪の上に置いた手をゆっくり労わるように動かしながら、カトレアは顔を上げた士郎に悪戯っぽい笑みを向ける。
「―――でも、大好きなんですよね」
「……ああ」
口元に笑みを浮かばせたまま士郎は頷く。
「……聞いても、いいですか? ……シロウさんの家族の事を……」
「別に構わないが……そんなに楽しいものじゃないぞ」
「そんなことはありません」
首を横に振ったカトレアは、士郎の頭に乗せた手を下ろし、服の裾をそっと掴んだ。
「どんな事でも……好きな人のことを知るのは嬉しいものですよ」
「昔と、今と……これからの話……ですか?」
「ええ……ふふ、でも、何だか懐かしいわ。子供の頃は、夏は良くここに泊まっていたわね」
ベッドの上に手を置いたアンリエッタは、遠くを見るように目を細める。見ているのは、昔の、子供の頃の光景。幼く、まだ何も知らなかった頃の自分と、ルイズの姿。
「そうですわね。二人で一緒にベッドに入って……色々な話をしましたわ」
「ルイズは覚えてる? 小さな頃交わした約束のことを」
「約束ですか?」
ベッドに腰を下ろしたアンリエッタの横に座ると、ルイズは首を傾げた。
「えっと、どの約束でしょうか?」
幼い頃にアンリエッタと交わした約束は、実のところパッと思い出すだけでも軽く十はあった。どれもこれもたわい無い約束ではあるが、中にはとんでもない約束もある。それこそ今思えば自殺ものの約束が……。
まさかそれかと思ったルイズであるが、その場合アンリエッタも道連れになるのでそれは流石にないだろうと上がった候補から直ぐさま蹴落とすルイズ。うんうんと腕を組みながら唸り声を上げていると、笑みを含んだアンリエッタの声が掛けられた。
「そうね、たくさん……たくさん約束をしましたわね……。わたくしが言う約束はね、好きな人が出来たらお互いに報告するって言う約束の事よ」
「ああっ、あれですね。覚えています。確かに約束しましたわ……って、え?」
解いた両手を打ち付け喜色の声を上げたルイズだったが、声を尻すぼみに消えていき、最後は小さな疑問の声を上げて消えてしまう。横に座るアンリエッタに錆び付いた人形のようにゆっくりと顔を向けたルイズは、首をカクンと傾けた。
「あの、姫さま?」
「わたくしはね……ルイズ」
疑問の視線を投げかけるルイズに、アンリエッタは吐息と共に浮かべた笑みを向ける。向けられた笑みに含まれたものに気付いたルイズは、小さく息を詰めると目を真剣なものにして改めてアンリエッタ
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