糸流れ 史
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た文庫本を読みつつ残った駄菓子を摘んだ。
暫くしてレイフォンは嫌になったのか叩き落すのではなくボールを掴んだ。
腕時計を確認する。自動巻きのその短針が示す時刻もそこそこ。それを合図がわりに本を仕舞いボールを己の手元に戻していく。
レイフォンに近づくと握っていたボールを投げられる。活剄で強化して投げたのだろう。一直線に向かってきたそれは十分な力が込められていた。
「今日はもう終わりだ」
「……はーい」
「物に当たるなよ。武芸者が感情任せに力を振るうな」
ふてくされたようなレイフォンに言う。
「ぶげいしゃだからこんなことしなきゃなんでしょ。ぶげいしゃってやだな。なんでもがまんしろって」
「そういう立場だからな。都市を守り汚染獣への盾となる。特にレイフォンは才能があるからな」
「なんでそういうたちばなの?」
「世界の状況的にそうせざるを得ないからだ。代役がいないんだよ」
実のところを言えばどうしてもそうでなければならないという訳ではない。
都市内の安全は都市民が協力すれば対処は出来る。汚染獣がいかに堅い甲殻を持っているといえど大量に火薬を用いた火器を使えば打ち破れる。
事実、都市警の実働員には一般人もいるし汚染獣対策の用の火器もある。
問題は安定供給の面だ。
汚染獣の襲来は一匹ではなく複数だ。絶対数も上限があるわけではなく繁殖もする。何回撃退すれば終わり、なんていうものはない。
汚染獣を火器で撃退しようとすれば多大な資源が必要となる。レギオスという限られた世界でそれは厳しい問題だ。
汚染物質の満ちる中で回収するのも困難となる。かといって回収が容易になるようにと汚染獣が外縁部に来てから使うなら武芸者が出張れば十分である。
火器が重宝されるのは安全に、距離を離れて攻撃できるからという面が大きい。一回でも攻撃を喰らえば終わりな都市外スーツを来た戦闘ならばそれも言えるが、都市内の、外縁部での戦いでは違う。負傷すれば引けばいいし治療も受けられる。武芸者の中には剄を弾として銃を使う者だって居る。効率もそちらが上だ。
この世界で生きていく上での理由として、汚染獣の相手は武芸者に任せるのが一番適任なのだ。
武芸者が必要であるといっても一般人からしたら武芸者は異質なものだ。相手がその気になれば素手で容易く殺されてしまう。銃や刀を常備した隣人と同じ。仲のいい友人でもなければ恐怖の対象になる。
都市を守るというのはそれを払拭する為の一つ。
武芸者は人々を守るものであり、恐怖すべき対象ではない。都市の防衛への従事もそうである、と。
理由があれば人は納得できる存在なのだから。
資源という物理的な理由から。
恐怖という心理的な理由から。
武芸者と一般
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