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IFのレギオス そのまたIF
糸流れ 史
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での飛距離を測り、それよりも二者の間隔は離す。剄が強すぎれば頭上を越し、弱すぎれば地面に落ちる。
 活剄を使わねば届かぬ距離にいる相手に正確に球を投げることで剄の大小並びに体のバランス調整の感覚を掴む。

 剄とは生きていく上で無意識に生み出されるが、使うとなればそれに対応した意識と感覚がなければならい。
 活剄によって強化されるというのは一般人で言えば薬物で強化される様なもの。走ろうとすれば足の速さに胴体がついてこず倒れ、殴ろうとすれば腕の速さと意識のズレが生まれ体がよろける。そうでなくても上がりすぎた感覚に自分の体で無い様な奇妙な違和感が出る。
 そのズレを慣らさせ、成らせる。
 どちらも自分の体だと分からせ、任意に扱えるようにさせる。
 その為の訓練の一つだ。

「あっ」

 投げようとしたレイフォンの手の中で球が割れ、破裂音が響く。
 剄の量が調整できず力を入れすぎたのだ。その為に余り頑丈でなく膜の薄い球を使っている。
 新しい球をポケットから出し、レイフォンに投げる。三球用意した内の三球目だ。

「それが最後だ。割れたら菓子はやらん」

 上手く出来たらの餌としていくつか菓子を用意した。座っている自分のすぐ横に置いてある。

「くれるっていったじゃん。うそつき」
「欲しかったらちゃんとやれ。五回連続で投げられたらやる」

 ここだ、とばかりに掌をひらひらとレイフォンに向けて振る。

「ばーかばーか」

 煙草を吸いながら罵倒を受け流す。小さな子供の語彙など大したものではない。
 上手く飛んできた球を手で受け取り投げ返す。今のところ最高連続数は二球。五は遠いだろう。
 用意しておいた菓子の一つを取り袋を開ける。

「あー!!!!」

 叫び声を無視して中に手をいれる。長らく食べていなかったチープな味の菓子を噛み砕く。
 訓練の為に久しぶりに菓子を買ったが思ったよりも悪くない。食べなかった間に菓子も進化したのだろう。最後に食べた時の記憶にある重いそれでなく安っぽいが飽きが来ない感じだ。
 地団駄踏みながら指で指してくる子供を見ながら見せびらかせるように食べ続ける。

 袋を傾け最後の欠片を直接口に流し込む。
 同時、小さな三回目の破裂音が響いた。




 

「おい、さっさと機嫌直せ」
「ふーんだ」

 レイフォンはこちらを見ようとしない。先ほどの菓子のことを根に持っているのだろう。
 こんなことも今まで何度もあった。対策もある程度考えてある。
 
「……終わりか」

 吸いきった箱を握り潰し次のを出す。新しいのを咥え火を付ける。
 視線を感じて向けばレイフォンが見ていた。

「それ、ぼくもほしい」
「ガキには早い。毒だからやめとけ」

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