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アセイミナイフ -びっくり!転生したら私の奥義は乗用車!?-
第17話「僧侶と節操なしと次の街へ」
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コップに注がれたワインを飲み干しながら、自分を睨むグウェンに注意するシド。

そのセリフに少し嫌な予感を覚えて、イダは話題を変えようと決心するのだ。

「えーっと、すいません、シドさん。先ほどのお話ですと、本当に神殿でも

偉い人なんですよね。それがなんでこんなところに来ているんです?」

イダはその問をしながら、先ほどシドから聞いた言葉を反芻していた。

彼は「黒く超越する空色」の帝都神殿でも数少ない儀式魔法の陣頭指揮をとれる

高位の神官だった、というのだ。それが本当ならばこんな辺境の酒場で酒を飲んでいる事、

それ自体が明らかにおかしいことである。

「なあに…少し嫌気が差しましてね。儀式魔法で行えることは少ない。

それが本当に星と民と神のためになっているか疑問にも思ったのです。

そして、私は儀式魔法は確かに強力なものを扱えるのですが、冒険者時代が短く…

棒術について修行し直そうとも思っていまして」

先ほど感じた寂しさを少しだけ露わにして、彼はつぶやくように答えると、

ピッチャーのエールをジョッキについでそれを一気に飲み干した。

ブハア、とオーク特有の臭気を伴う息を吐き出しながらジョッキを置く。

イダはその態度に、まだ隠していることはあるのだろう、そしてそれを話したくは

無いのだろうと断じて何も言わない。それが思いやりなのだ、と生前のことを思い出す。

彼女に大きな影響を与えた一人の坊様が、やはりいつかこのように落ち込んでいた時、

彼女を引き取っていた大叔父は「どんなに立派な人でも泣きたいことがある」と

寂しげに自分を窘めたことを思い出し天を仰いだ。

「…そうですか。わかりました」

一瞬の躊躇を見せて、イダはそう言って話を打ち切る。打ち切ると同時に場に妙な沈黙が

訪れてしまったのだが、それを指摘するものはいない。しばし、酒と食べ物を咀嚼し、

嚥下する音だけが彼女たちのテーブルを支配していた。

「にゃあ、辛気臭いニャア。せっかくの酒がまずくなるニャア」

その空気を破壊したのはグウェンだった。グウェンは不機嫌を隠そうともせず、

ジト目でシドを見つめると、「なんもやること無いなら手伝えにゃ」とおもむろに切り出す。

「…どういうことです?」

「決まってるにゃ。下手すりゃ新事に巻き込まれそうなことになってるからにゃ。

お前もわちきらと一緒に来るにゃ。いいにゃろめ、ストラ?」

「いや、そんなの聞かれても…ねえ」

面食らうシドと、ドヤ顔のグウェン。そして、許可を求められ困った顔のストランディン。

「「「…」」」

三様の顔がイダを見据え、彼女に回答を求めていた。


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