第九十八話 名前の意味
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振り向いたその先にいたのは拳銃を構えたマリュー・ラミアス艦長だった。アークエンジェルやMS隊に回収するように言うのではなく、マリュー・ラミアス本人に名指しで回収するよう言われ、キラの言葉に気になった彼女は自らここに来たのだ。
ネオも流石に拳銃を向けられては手を上げざる得ない。
「私はこのアークエンジェルの艦長であるマリュー・ラミアスです。貴官のお名前と正式な所属を―――――」
「……これはこれは、どうもご丁寧に、艦長さんでしたか。自分は地球連合、第81独立機動軍ロアノーク隊のネオ・ロアノーク大佐だ。尤も、今も軍籍が残っているかは不明だがね」
「……ファントムペイン、あのブルーコスモスの……」
場はますます騒然とする。マリューも思わず手にしている拳銃に力を込めてしまう。
「オイオイ、そんな物騒なものは仕舞ってくれよ。それにそんな怖い顔したんじゃ、美人が台無しだぜ?何も俺はこの船を欲しいって言ってるわけじゃない。MSを一機貸してほしいって言ってるんだ。そっちだって余らせて無駄にしているMSがある。お互い利口に行こうぜ?」
ネオとしてもこんな所で殺されるわけにはいかない。口巧者にこの場を乗り切ろうと目の前の艦長に話しかける。
「……ええ、確かにそうね。でも、貴方みたいに本音を隠そうとするタイプは嫌いなの」
「つまり、仮面を取って誠実さを見せれば貸してくれるって事か?」
あたりに漂う沈黙。騒然としていた騒めきも、ただならぬ気配からか小さくなっていく。その様子から顔を見せる程度でMSを貸してくれるっていうのならいくらでも取ってやるさとばかりにネオは被っていた仮面を外した。
「傷があるからあんまり見せたかねえんだがな……まあ、いいさ。これで満足だろう?」
しかし、返ってきた反応はネオの予想していたものは大きくずれていた。沈黙、そして周りの表情から感じられるのは困惑。顔の左側に大きな傷跡があり、それに驚いているのかとも思うが、それにしても大袈裟だろうとネオは感じる。
まるで時間でも止まってしまったかのような様子から、この際ネオは無視してMSへ向かおうとした。
「……、待って!ムウ!!」
(またその名前!一体誰だっていうんだよ、そのムウとかいう少佐は!?)
一瞬、頭の中で痛みのようなデジャヴを感じるが、無視する。ネオにとっては自分のこのデジャヴや違和感が何であれ、ネオ・ロアノークという人格や記憶の否定にはならない。餓鬼の頃に酒に入り浸っていた親父から逃げ、軍に入って飯を食らい、自分を含めた不良共と一緒に馬鹿やって、面倒な部隊に配属されてからも必死に生きてきた。
そんな記憶を否定されることになってしまいそうな、鬩ぎ合う喪失感と充足感。それが彼にとってアークエンジェルという居場所を余計に
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