第十話
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司さん、いらっしゃいますか?」
戸の向こう側から誰かが声をかけてきた。声質的に妖夢だろう。その後入っていいかと聞かれたので、火照った顔をさましてから部屋の中に入れた。部屋の中に入ってきた妖夢は俊司の前に座ると、何を思ったのかあるものを取り出した。
「これ……拝見させていただきました」
「あ……」
机の上に出されたのは、ついさっきまで思いだして恥ずかしがってた例の手紙だった。現物を見せつけられ、また顔を赤くしてしまう俊司。それにつられて妖夢も顔を赤く染めてしまった。
しばらく沈黙が続いた後、恥じらいながらも妖夢が口を開いた。
「俊司さん、約束……覚えてますよね?」
「……約束?」
「生きてたら……直接言っていただけるんですよね?」
妖夢はほほ笑みながらそう言った。
約束と言うのは、再思の道にある拠点にむかう前妖夢にあることを伝えると約束したことだ。生きていれば自分の口で、死んでしまえば手紙でそのことを伝えると言っていた。もちろん俊司は死んでしまったので、妖夢は手紙の中を見ているはずだ。
だが、やっぱり直接聞きたいと言わんばかりに、妖夢はこっちをじっと見ていた。
「えっ!? いや、手紙……見たんだよね?」
「はい。これはきちんと拝見しました」
「……だったらいいんじゃ――」
「ダメです!」
逃げ腰の俊司に喝を入れる妖夢。逃げ場を失った俊司は、恥ずかしさと緊張で心がはちきれそうな感覚に襲われていた。
「でも……死んだのには変わりないし――」
「ですが、俊司さんの魂は生きてましたよね?」
「それはそうだけど……」
依然逃げ腰の俊司だが、妖夢はそんな彼をじっと見つめた。死んだとはいえ亡霊として帰ってきた。それに、妖夢には一度つらい思いをさせてしまったこともある。
俊司は……性格的に断るような人間ではなかった。
「……ああ! わかった、わかった! ちゃんと言うよ」
「……はい」
覚悟を決めた俊司は、じっと妖夢の目を見つめる。さすがに恥ずかしくなったのか、今度は妖夢が少し顔を赤く染めながら、視線を泳がせていた。
「……ちゃんとこっちを見てくれよ」
「わ、わかってますよ」
静寂が広がり心臓の鼓動が聞こえてくる。緊張のせいか、背中から軽く汗も吹き出ていた。俊司は一呼吸入れて心を落ち着かせると、そっと口を開いた。
「俺は……妖夢の事が好きです」
「……ぷっ」
俊司の告白を聞いた妖夢は、何を思ったのかクスクスと笑い始めた。
「なっなんだよ!」
「いえ! 嬉しくって……おかしくって……」
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