暁 〜小説投稿サイト〜
立派な魔法使い 偉大な悪魔
第八章 『魔帝』
[10/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初


 そのスパイゴーレムには、他のスパイゴーレムが見ている映像が映し出されている。それをみたダンテは、同じ様にニヤリとした。

「ビンゴだぜ、譲ちゃん」

 朧げな陽炎をあげてぽつんと浮かんでいる、大きな鏡のようなもの。間違いなく『魔鏡』である。

「それでは皆さん、行きましょう!」

 ようやく行き先が決まり、ネギが陣頭をきって歩を進めた。そんなネギの背を刹那はもの憂いげに見つめていた。





 深く沈んでいた意識がゆっくりと戻ってきた。肌を締め付けるような寒気が、一層意識を覚醒させる。
 意識の輪郭がハッキリとしていく中で、フェイトは自身が気絶していた事を悟った。ネギとの全力の戦いで、さしものフェイトも魔力を相当消耗したようで、常に張り巡らせていた障壁が消えていた。
 
「無様だな……」

 自虐するようにフェイトは呟いた。あちこちに痛みがはしる体に、まだ朧気な意識。今の自分の姿を形容するに相応しい言葉だ。
 倦怠感の残る体をなんとか奮起させて立ち上がるが、なかば無理やり立ち上がったためかふらつき、倒れそうになる。フェイトはフラフラとそばに生えていた氷柱にもたれかかった。
 辺りを見回すと、一面、氷の世界と言うのが相応しい光景だ。地面は凍りつき、氷があらゆる方向を氷が埋め尽くしている。
 ただ一箇所だけ、フェイトが倒れていた所だけが土色の地面が露わとなっていた。

「これは確か、『闇の福音」の魔法か」

 迷宮のように入り組んだ氷の世界の中、フェイトはゆっくりと歩を進めていく。意識を失う前に自身がみた光景は、ネギ達へ加勢に来た者達の中にいた吸血鬼が、聞いたこともない大型の魔法を放ったところだ。

「流石は吸血鬼の真祖(ハイ・デイライトウォーカー)と言ったところか」

 それは純粋な感想だ。創造神である造物主によって造られた使徒を、いとも簡単に氷漬けにしたのだ。それも一人や二人ではない。あの場にいた使徒全てだ。
氷漬けされた使徒達とすれ違う度、そう思わざるを得ない。
 そして同時に、なぜ自分は氷漬けにされていないのか? という疑問も浮かんでくる。気絶していた為だろうか、とも考えたが、あの吸血鬼の真祖がそんなお粗末な魔法を構成しないだろう、と否定する。なにか理由があるのか、思考を巡らせるが答えは出てこない。
 考えながらも歩を進めていたフェイトの足が止まった。

「セクンドゥム……」

 フェイトの視界に入ってきたのは、他の使徒と同じく氷漬けにされた、セクンドゥムの姿だ。氷の蔦に絡め取られ、苦悶と恐怖の表情を浮かべながら凍りついている。
 それを見たフェイトは、溜飲が下がる思いだった。そして同時に戸惑った。今フェイトの中に浮かんだのは紛れもない”感情”で、造物主の使徒として
[8]前話 [1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ