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立派な魔法使い 偉大な悪魔
第八章 『魔帝』
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と考えていた。
 そのためダンテは、そのことに関しては話さずに「食い扶持稼ぐ為に始めただけさ」とだけ返した。


「ほう、我を倒すためではなかったのか?」


 突然、『静謐なる鎮魂の冥府』を声が包み込んだ。うるさく耳障りではない。あまねく物に降り注ぐような、人によっては『神の声』と思ってしまう程に厳かな声だ。
 ネギ達の目線は声の主を探そうと空虚な空を泳いでいた。敵が現れたのかと警戒している。だが、声の主は見つからない。ただただ暗く重い空が広がっているだけだ。
 そんな中、ダンテだけが空のある一点を見つめていた。射抜くようなその目は、迷うことなく向けられている。
 ネギ達もそこへ目を向けるが、何もない。一体何の声かと、木乃香がダンテへ話しかけようとした時だった。ダンテの声が天へ駆け抜けた。

「もったいぶらずに顔でも見せたらどうだ? ムンドゥス!」

 どこから出したのかと思うような声量でダンテが告げたのは、魔帝の名。それを聞いたネギ達に緊張が走った。こんなにも早く魔帝と対峙するとは思ってもいなかったからだ。
 そんなネギ達をあざ笑うかのように、高笑いが響き出した。先ほどの厳かな声とはうって変わって、品を感じることができない、ただ尊大なだけにしか聞こえない笑いだった。
 ムンドゥスの高笑いが大きくなるにつれ、雷鳴が轟き始める。赤い雷光が空にいくつも走り、大気を引き裂く。次第に空間が歪み始め、それは顔を覗かせた。
 真紅よりも赤く、魅入ってしまう妖しい三つの光。遙か上空にいるというのに、眼前にいると錯覚してしまいそうな程の存在感。有無をいわさず恐怖心を植え付ける魔性。
 全てにおいて”圧倒的“という言葉が、何よりも相応しい。

「あれが、魔帝ムンドゥス」

 ネギは思わず呟いていた。それが畏怖からなのか敵対心からなのかすら分からないが、自然とその名を口にしていた。

「ダンテ」

 その声は間違いなく先ほどの『静謐なる鎮魂の冥府』を包み込んだ声と同じものだ。

「貴様と相見える時をどれほど待ちわびたか」

 空に浮かぶ赤い妖光以外は何も見えず、ムンドゥスの姿や顔色は判別できなかった。だがネギ達はその声に、万感の思いとでも言えるような何かを感じ取っていた。それは間違ってはいない。
 というのも、ムンドゥスは二度封印された。一度目は腹心であった魔剣士スパーダの裏切りによって。二度目はそのスパーダの息子によってだ。さらにそのスパーダの息子は、人間とのハーフという半端者にも関わらずにだ。
 魔界を統べる者としてこれ以上の屈辱はあろうか? 恨み辛み怒りといった様々な激情は、一片たりとも、一方たりともムンドゥスの中から消えることはなく、ダンテへの復讐がその身に焼き付いていた。
 もっとも、そんなことはダン
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