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立派な魔法使い 偉大な悪魔
第八章 『魔帝』
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「ええ、瑣末な文献でも構いません。今すぐに調べさせなさい」

 ゲーデルは魔界の歴史を調べるように、後方の艦隊に待機している部下へ指示していた。というのも、アルはザジから言われたことをゲーデルにも伝えていた。なぜならより多くの情報を手に入れるためである。
 ゲーデルはメガロメセンブリア元老院議員の一人であり、オスティア総督でもある。そのため様々な機密事項についてアクセスする権限を持っている。情報収集を行うのなら、ゲーデルを活用しない手はないだろう。

「何か分かったことがあればすぐに連絡を。では」

 通信を終えたゲーデルは、ふぅと一息ついた。

「ただでさえ記述が少ない魔界史、とりわけ太古代となると満足に無いでしょうね」

 魔界の歴史、それも太古のものとなればまともな文献が残存しているのか分からない。仮に存在していたとしても、それをもとにザジの計画を推察するのは容易ではないだろう。

「アルの方でも調べるだろう。何かしら手がかりは出てくるさ」 

 ゲーデルのぼやきを耳にしたタカミチは、居合い拳を連射しながら言葉をかける。

「お前は何か知らないのか?」

 そのタカミチにゲーデルが問い返す。もっともその声色は「ま、期待していないがな」と聞こえてきそうなものだったが。

「お生憎、太古の魔界についてなんて僕も知らないよ」

 タカミチもそれを読み取ったのか、やれやれと言った感じで返していた。そんな二人に龍宮が声をかけた。

「お二人とも、歓談するのも結構だが――」 

 龍宮は対物狙撃銃であるバレットM82で遠方の悪魔を狙い撃っている。そこへ赤い衣を纏った骸骨のような悪魔『ヘル=ラスト』が、奇声と共に急接近する。その手に握られている鉄の鎌が、龍宮へ向けて振り切られる。
 機敏に反応した龍宮は軽く跳躍し、迫る刃をすれすれで躱す。そして空中で態勢を変え、いつの間にか抜いていたデザートイーグルの照準をヘル=ラストの後頭部へ合わせる。魔力が乗せられた弾丸はより強い反動と共に銃口から発射され、ヘル=ラストの頭部を粉砕した。
 龍宮は華麗に着地すると同時に、長い脚を活かして背後を蹴る。そこには着地を狙おうとしていたアサルトがいた。
 龍宮の脚がアサルトの顎にめり込むが、硬い鱗を持つアサルトは蹴りだけでは仕留めきれなかった。宙を舞ったアサルトは、早急に態勢を立て直そうとするが――目の前に穴が現れた。それが銃口であるとアサルトが理解するよりも早く、龍宮はバレットの引き金を引く。
 魔力と共に撃ち出された弾丸は、アサルトの鱗をやすやすと砕いた。アサルトの頭部には風穴が空き、鮮血と肉片が飛び散る。絶命したアサルトの死体は、排出された薬莢とともに地面へと転がる。

「もう少し手伝って頂きたいものだ」

 一
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