鬼と龍の兄弟は U
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大型宝石店『ジェラード』。
暗く広いフロアには、頑丈な鍵のかけられた――いや、かけられていた――ショーケースがあり、中には話題の宝石『ホルト・ヴィネシア』が、顔に紋様がある男に握られていた。
「これだな、龍炎」
「ああ」
クッと笑う2人に、激しい光が降り注ぐ。
「おとなしく後ろ手に伏せろ!抵抗すれば射殺する!」
と、一昔前の台詞を吐きながら鬼炎・龍炎へ近づく警備団。
「だってさ、龍」
「馬鹿げてるな、鬼。打っても俺には当たらないし?」
「ふざけるな!とっとと後ろ手に伏せろ!」
1人の男が厳しい顔で銃のロックを外した。そのままトリガーを引く。
火炎放射器のような勢いで炎が飛び出し、逃げる間もなく鬼炎を覆った。
「あはは。意味ないよ、そんなの」
と楽しそうに笑う龍炎に向けて、「黙れ、泥棒風情が・・・っ」と息巻き、再びトリガーを引こうとした男の首筋に、手刀が当たる。コキリ、と音がして、男の首関節が外れた。
「なっ!?」
驚く男たちに向って、炎に巻かれたはずの鬼炎は平然として言った。
「あー・・・痛ってぇじゃねぇかこの野郎」
「帰るぞ、鬼炎。俺は宝石を鑑定しないといけない」
「ふ、ふざけやがって・・・一気に掛かれ!」
およそ統率感の欠片もない動きで、男たちが龍炎に飛び掛る。
「ええ、マジ? 俺かよぉ・・・」
心底面倒くさそうに呟いた龍炎は、いつの間にか手にしていた注射器の針を最初に飛び掛ってきた男の首筋に刺した。
「ぇ・・・?」
小さな声を出した男は、次の瞬間に白目を剥いて倒れる。
他の男たちも同様に倒していき、近づいてこない者には自分から近づいて注射針を刺して行く。それを10秒弱で終わらせ、龍炎はクールに「鬼炎、帰るぞ」と言った。
「ハイハイ。俺の出る幕ないじゃんかよぉ?」
「悪いな」
『ホルト・ヴィネシア』その他諸々の宝石を持った2人は、悠々と店を後にした。
その姿を見られていることに、気付かずに。
「へぇ・・・あれが、鬼の子と龍の子かぁ」
望遠鏡で二人の背中を見つめながら、赤色の髪の青年が呟く。
すると、隣でくすくすと笑っていた糸目の男が、ふざけた口調で
「あ、気に入っちゃった?気に入っちゃっちゃっちゃった?」
と聞く。
「あー、うん。気に入った。俺、あの2人コレクションにする。手伝ってよ、朱糸眼」
「いいよー。叶壊は面白いからねぇ」
楽しそうな声は、暗い闇に沈んでいく――――――
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