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アセイミナイフ -びっくり!転生したら私の奥義は乗用車!?-
第1話「私、思い出した」
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朴訥で真面目な声で、ヤズと呼ばれた小さな少年は答えた。表情は声同様真面目そのもの。まるで、石のように。

「…おっけー、わかりました。明日掘りに行ってみる」

その性質からすると、この少年は鉱山の精霊ノッカーなのだろう。ノッカーはいい鉱脈があると、コンコン、と

音を立てて鉱夫たちに知らせる鉄と石の精霊だ。ノームと違って人と積極的に関わる彼らは、自分たちの力の源である金属と石を

人やドワーフに使ってもらうことで、己の住処を拡散させるのだと言われている。

「調度良かった。ヤズ…実はねえ…」

真面目で朴訥な彼ならいい相談相手になってくれるだろう。イダはオーの光に照らされながら、ヤズを机の上に乗せてそう言った。



―――翌日。

「…ふわーぁぁぁ…眠い…」

銀のペンダントを弄びながら、イダはヤズの後を歩いていた。昨日、教えて貰うことになっている良い土の取れる場所へ向かうためだ。

「無理無理ーこんなところで、エルフさんたちに怒られないように客増やすとかムズすぎワロタああ!」

ヤケ気味に叫ぶ彼女の目の下のクマは、昨日よりも遥かに濃い。徹夜でもしていたのだろう。

「イダ。そんな事言わないで。」

グジグジと愚痴るイダに向けて、ヤズは呆れと心配をおりまぜてそうたしなめる。

「そんな事言われても…」

朝食の席で父に言われた言葉を思い出す。

『無理はしなくていいぞ?なんだったら、ずっと思いつかなくても構わん。最終解決はちゃんとあるって昨日言っただろ?』

楽しそうにいうリックの姿を思い出し、少々肩を落とす。

「そりゃ、エルフさんたちに匿ってもらえば安全だろうけどさあ…無理。無理無理。これ以上エルフさんに迷惑かけてどーすんのよ。

反逆者扱いとかされたらシャレにならないってばさ…」

もし遣いの森に帝国の軍隊が来るとしたら…それは、もう戦争だ。なにしろ、大陸で最強と名高い国家の軍隊が来るのだ。

プロイスジェク帝国は大陸の東方に存在する大国である。300年前に建国され、神聖皇帝と呼ばれる帝が治める絶対王政の国家だ。

貴族は百年も前に官僚として再編され、国家に忠誠を尽くしている。軍事力と技術力に長け、特に火縄銃と大筒、魔法兵で固められた

「五連隊」と名付けられている総数5万の主力兵団は、同数でなら隣国にして大陸最大の版図を持つ王国マールヴァラの

鉄と森の軍団をも紙のように打ち破るという。事実、数年前に起きた南方のティヤート君侯国との戦争では、わずか1000人の五連隊分隊が、

5000を超える侯国軍を打ち破っているのだ。如何に森での戦いに長けたエルフや、草原での戦闘に慣れたグラスランナーたちでも

太刀打ちはできないだろう。


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