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アセイミナイフ -びっくり!転生したら私の奥義は乗用車!?-
第1話「私、思い出した」
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ックはその言葉におもむろに立ち上がると、

イダヘ向けて、言葉を紡ぐ。…はっきり言えば、これはいつもの光景だ。

イダが両親に何かを要求し、それに対して両親が無理難題をしかける。それがいつもの光景、というのは実に歪んでいるが。

「もうお前も15歳なんだろ?帝都でなら、成人の日を迎える年だ。そこまで言うんなら、宿の経営に本格的に参加してもらうぞ。

いや、参加というレベルではない。お前に経理と経営改善を任せる。」

「…う。そんなつもりで言ったんじゃ…そ、それに!宿の経営自体は、お父さんが考えるべき、っていうか…改善案は出すっていうか…」

気弱くイダがその言葉に抵抗しようとすると、スッと優しく、そして企むようにリックの目が細められた。

「前にも少し説明したが、この森はエルフとグラスランナーが管理している。本来外縁部であっても、冒険者や迷子がいてはいけないんだ。

彼らはこの森に、本当なら誰も入ってほしくないんだよ。

そこで開いているうちが経営を改善する、となると多大な工夫が必要になってくる。リピーターが変に増えると、俺があいつに怒られる。」

楽しそうにいう彼に、イダはゲンナリとした声で返す。諦めも混じったその声は少し悲しそうだった。

「じゃあ、税金払えなくて農奴ルート一直線…?嘘でしょ…」

「そこはそれ。最悪の場合、あいつに匿ってもらうさ。もし金目の物をあいつにもらったとしても、帝都まで行って金に変えるなんて

出来るはずないだろ?エルフの財宝をそのまま官吏に渡そうもんなら、あいつらに迷惑がかかる。そういう方法を取らずに経営を改善する…

まあ、いずれはお前もこの宿を継ぐわけだし、今のうちにそういう難題を抱え込んでみてもいいじゃないか。無理は無理、なんて

諦めてしまったら、どうしようもないんだからな」

実際、俺には商才も経営能力もないからな、とにこやかにいう父に、心底げんなりした顔で

「わかった…考えてみるわ…」と返し、目の前に落ちている台帳とにらめっこを始めるイダの目のクマは、更にその色を濃くしているようだった。



部屋に戻ったイダはその手に持った宿の経営を示す台帳を恨めしげに見やり、深い溜息をついた。

部屋にはシンプルなベッドと、勉強机と思しき椅子とテーブル。クローゼットは開け放しで、その下の小さいタンスもそう。

ドロワーズやシャツがむき出しになっている。そして、彼女のものと思われるノートが何冊が床に落ちていた。

「うわーうわーうわー…やってらんね、やってらんね、マジやってらんねー!お父さんもお母さんも毎度毎度ムチャぶりを…」

ギリギリと歯ぎしりしつつ、その顔を歪めている少女は、今までに両親が言ってきた無茶を思い出していた。


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