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東方虚空伝
第三章   [ 花 鳥 風 月 ]
三十二話 狂花の蕾
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 馬車を引いていた男が結界の前まで馬を引き懐から札の様なものを取り出し何かを始める。馬車の上では黒髪の女の子が必死に嗚咽を抑えながら泣きじゃくっており、その様子に馬車の後ろに居た妖怪の一人が怒声を浴びせる。

「うっせーぞクソガキ!黙りやがれ!」

 怒鳴るだけでは足りなかったのか結構な力を込めて馬車の縁を蹴っており、その行為に女の子は我慢できなくなったのか声を上げて泣き始め妖怪は更に怒りを露にし、黙らせようとしたのかその女の子に掴みかかろうと手を伸ばした時、妖怪と黒髪の女の子の間に薄紫色の髪の子が割って入った。

「泣いている女の子に怒鳴るだけでは飽き足らず手まで挙げようなんて最低ですね」

 縛られているにも関わらず薄紫色の髪の子はきつく妖怪を睨み返していた。その視線を向けられた妖怪は怒りの矛先を代えその子の胸倉をを掴み上げるがもう一人の妖怪が慌ててその手を離させる。

「馬鹿野郎!こいつは大事な商品だろうが!それにあの化け物に対しての人質でもあるんだぞ!」

「あ、あぁ悪い、確かにこいつに何かあったら柳杉屋の旦那や百鬼丸様に何されるかわからねーからな。全くこんなガキ拾うんじゃなかったぜ」

「しょうがないだろう、此処に来るのを見られちまったんだから。どんな些細な目撃者も出すな、て命令だったろう?まぁこんなガキでも金にはなるさ」

「はっ!こんなガキ買おうなんて物好き居んのかよ」

 妖怪はそう言って黒髪の女の子に視線を向けるが、セミロングの女の子が黒髪の子を庇うように立ちはだかった。それを見た妖怪は「けっ!」と吐き捨て馬車の前の方に移動する。セミロングの女の子はまだ泣いている黒髪の子に「大丈夫、大丈夫だからね」と慰めている。
 結界の方では馬車の正面の森の風景が(たわ)み丸い門を形造り、そして男達と馬車がその中に入るとその撓みは消え元の風景に戻っていた。
 それを確認した僕は掴んでいたルーミアを手を離し茂みから出ると、案の定怒り心頭のルーミアの罵声を浴びせられる。

「この馬鹿!何で止めたのよ!」

「ごめんねちょっと確認したい事があったから」

 途中ルーミアが飛び出そうとしたので僕は手を掴んで引き止めたのだ。理由はこの結界が外から開ける類か合図で中から開ける類か確認する為、正直に言えばあそこで助けても良かったのだが途中で出てきた『商品』という単語が気になって止めた。
 もしかしたら結界の中にもあの子達の様に囚われている子達がいる可能性が出てきたからだ、そうルーミアに説明すると何とか理解を得る事が出来た。

「でもどうするのよ、結局最初の状況に戻ったわよ?」

 ルーミアの言う通り結界の入り口は閉じておりもとの状況に戻った様に感じるがそんな事は無い、開け方さえ分かればこっちのものだ
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