第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
三十二話 狂花の蕾
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寺小屋休みだしね〜」
卓袱台に両手を投げ出し突っ伏しながらそう言った。
「まぁそこまで気にする事でもないよ」
神奈子は栞にそう言うが、何故か栞は顔を赤くしながら自分が思い至った事を口にする。
「も、もしかしてそ、そのあ、逢引とか…」
それを聞いた三人は頭の中で虚空とルーミアの逢引の光景を思い描いてみる。そして三人同時に噴出した。
「「「 アハハハハハハハハッ!!在り得ないというか無理!! 」」」
大笑いする三人に栞は少し唖然としたが、よくよく考えてみると確かに無理だ。どう考えても虚空が大剣を振り回すルーミア追い立てられている光景しか浮かんでこない。
「まぁ推論を立てると、お父様が朝唐突に山菜を食べたくなって山に向かおうとしたら偶然ルーミアを見つけて理由も告げずに連れて行った、なんてどう?」
紫が冗談ぽくそんな推論を口にすると諏訪子や神奈子は「あ〜在り得るね!」などと言って笑うが、実は大当たりしているとは誰も思わなかった。
四人でそんな風に談笑していると社務所の玄関に設置している鐘の音が響き、その音に栞が反応し「応対してきます」と三人に告げ玄関の方に小走りに向かっていった。
暫くすると栞が戻ってきて客が神奈子に謁見したいとの旨を伝えてきた。その様な事は珍しくなく神奈子は栞に客を本殿の方に案内する様に頼むと腰を上げ自身も本殿に向かう。紫は興味が無いようでそのまま居間に残り諏訪子は神奈子と共に居間を後にする。
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
本殿には奥の方に神奈子と諏訪子が座りその横に栞が腰を下ろした。そして神奈子達の正面には謁見を申し込んできた客の男と恐らく付き人の男が座っている。
男は五、六十歳位で白く染まった髪を短く刈り込み小太りの身体に質の良い珊瑚色の羽織に海老茶色の袴を穿いており裕福な印象を受ける。付き人の男は黒髪の短髪で黄緑色の色無地に身を包んでいた。
神奈子達が腰を下ろすと男は頭を下げ慇懃な態度で話し始める。
「八坂様、洩矢様、突然の訪問にも関わらずわたくしの謁見をお許し頂き誠にありがとうございます」
神奈子が「気にするな、面を上げ」と男に言うと男は顔を上げ話を続ける。
「申し遅れました、わたくしは南の都で廻船問屋『柳杉屋』を営んでおります菊池 殿朗(きくち でんろう)と申しまして、こっちは付き人で番頭の代作にございます」
男、殿朗がそう言うと代作は深々と頭を下げる。それを見ながら神奈子は殿朗へと問いかけた。
「して今回の用件は何だ?殿朗とやら」
「はい、実は差し出がましいのですがわたくしの嘆願をお聞きくだ
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