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魔導兵 人間編
いつか
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「左霧様、今までありがとうございました。私は長い旅に出ようと思います」
「庭だね? 庭に行くんだよね? その木は桜子が生まれた時に植えた大切な桜なんだから変なことしないで」

 旅に出ると言いつつ庭の木に縄をくくりつける華恋に、冷静にツッコミを入れる左霧。「二人共冷たいです……」といじけたように嘘泣きを始めた華恋。こうなるとかなりメンドくさいので先に桜子の対処に移る。

「ごめんね桜子。淋しい思いをさせちゃって」
「む〜……」

 学校生活に支障があるのではないかと一瞬不安に思ったが、華恋の話だと放課後の様子を見た限りでは友達もでき、楽しそうにしているとのことだった。ということは単純に兄を取られて拗ねているのだろうか? そう思うと何とも可愛らしいものだ。こんなに元気で、美しく聡明な妹に、自分を思ってもらえるなんて……自分は果報者だ。頭の中は鳩ポッポ。兄バカもここに極まれり。

「よし、今度の休日はどこかに遊びに行こう!」
「……ぷん!」
「よし、休日は遊園地に行こう!」
「……ぷん!」
「よし、休日は隣町に行こう! 大きなショッピングモールが出来たらしいよ? 桜子の好きなもの何でも買ってあげる! ああでもお給料前だからあんまりお金のかかるものは……」
「じー……」
「ナンデモカッテアゲルヨ!」

 もはや涙目。今月はジリ貧で頑張るしかない。世の中の兄というものはここまで妹に甘いのか? だが、可愛いから仕方がない。可愛いは正義。

 それでも不満なのか。もごもごと華恋の下に寄り何やらひそひそ話に勤しむ桜子。それが終わるとコホンと華恋は咳をして、普段とは異なる声色で、

「おに〜さまぁ〜わたくしも魔法が使えるようになりたい! さくらこの一生のおねがい! ねぇいいでしょう〜おに〜さまぁ〜」
「……それは、桜子の真似なの?」

 涼やかな声と共に左霧は否定と嫌悪を顕にしたため、何事もなかったかのように華恋は普段通りの声で再び説明した。クネクネと慣れもしない動きもあり芸も細かいが、残念ながらウケが良くなかった。妹のことになると途端に厳しくなる兄は結構うざいことが分かった。

「恐れながら桜子様……桜様には魔術は使えません」
「えー!? どーしてー!?」
「桜子様には、マナが存在しないからです」
「まなってなぁに?」

 実はこの会話はもう数え切れないほどしている。そのたび、駄々をこねる桜子を宥めすかせるのが華恋の役目になっている。質問内容も同じである。要は忘れているのだ。

「マナ、とは魔術師が生まれ持っている魔力貯蔵量のことです。エーテルと言われる物質を体内で吸収し、『魔術回路』へと吸収され……」
「わかんない!」
「つまり、桜子様では不可能なのです」
「がーん! そんなこと、認めたくな
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