私は何者
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へと入っていくのだった。
「バッカじゃないの? 先生一人くらいにおどおどしちゃって!」
「でも、一応先輩だから……」
「そんなこと言ってたらいつまで経っても怪しまれるだけじゃない。全く、世話のやける……」
キツい。とにかくキツい。雪子は左霧の前では本性を表すのだ。なぜそうなってしまったのかは本人にしか分からない。あの日、悪魔に襲われた時は、あんなに自分に抱きついて震えていたのに……。女性という生き物は左霧にとっては未知の生物に見える時がある。
「何? その目は?」
「い、いや別に……それよりも、どう調子は?」
「ふん……まぁ、一応一通り目は通したけど……魔道書って一々言い回しが面倒でよく意味が分からなかったわ」
雪子はカバンに入れてあった左霧おすすめの魔道書を乱暴にめくった。ただでさえ教科書から体操着やらで重たい荷物を毎朝学校まで持ってきているにも関わらず、広辞苑も顔負けのヘンテコな本を持ち歩いているのだ。か弱い女子学生にはあまりの仕打ち。周りからは変な目で見られる。雪子は今日も最高に苛立っていた。
「でも……読めたんだよね?」
「そりゃそうよ。読めなきゃ本じゃないでしょ?」
「うん。その本は『魔力』がない人には読めないんだよ」
「え……?」
魔力、という言葉に雪子は素早く反応した。つまり、自分には多少なりとも魔力があるということだ。嬉しいような迷惑なような少し複雑な感情が入り混じる。左霧や母のような、普通の人とは違う者たち。
――――魔術師。私は、魔術師なのだ。
「そんなに固くならないで? 雪子さん。君に教えてあげる魔術は、自分の身を守るための力だ」
「守るため?」
「そうだよ。僕が教えてあげる魔術は『光』だ。魔術の中で最も守備に特化した力なんだ。比較的安全な術だから安心して」
「でも、あの悪魔から逃げた時の術も使うのでしょう?」
雪子はあの日のことをしっかり頭に刻んでいた。確かに左霧は悪魔を光の術とやらで牽制していた。それも無数の弾丸を浴びせるような、かなりえげつない方法で。
左霧は清々しいほど笑顔だった。まるでそんなことは当たり前のように。
「身を守るってことはね、雪子さん。攻撃しないってことじゃないんだ。光の魔術は守りに特化した力、だけどもちろん攻撃の術も存在する」
「……あなたは何が言いたいの? 先生?」
もどかしそうに雪子は問いただした。左霧は言いにくそうに口を閉ざしていたが、やがて雪子の方を真剣に見つめ、言葉にした。
「君に――――人を傷つけることが出来るのかい?」
「――――!」
今更ながらに、雪子は左霧の言葉に衝撃を覚えた。母に流されるまま、魔術を教えてもらうことになったが、果たして自分は覚悟があるのだろうか?
今まで平凡
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