闇の死者
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が雪子の体を舐めまわすように見る。その視線に、雪子は身の毛のよだつような嫌悪感を隠せない。
後悔しても遅い。なぜあれだけ母親に注意されたのか、やっと分かってしまった。それは現実に存在するのだ。怪物が!! 悪鬼が!! 悪魔が!!
「た、助けて……助けて……」
「ぶぁぁか!! 誰も助けてなんてくれねぇよ! 俺様悪魔! お前は劣等種! 家畜の分際で俺様を呼んだことを後悔するんだな!」
「雪子さん、大丈夫だよ。落ち着いて? 大したことはないよ。もう大丈夫、心配しないで」
「ぐはぁははははははははは! そうだ落ち着いて……んあ?」
「せ……先生?」
左霧は落ち着いていた。恐ろしいほどに落ち着いていた。この状況は誰がどう見ても異常だ。非現実的な怪物が現れ、命の危険が差し迫ろうとしている。普通の人間なら、パニック二陥っているはずだ。例え、胆力の強い者でも目の前の圧倒的な存在に立ち向かうことなど無謀と言っていい。
人と、悪魔の違い――――。
「なぁぁに生意気なことほざいていんだぁぁクソがぁぁ!!」
一瞬にして悪魔は左霧の目の前に移動した。凶暴な片腕を上から下に叩きつけ、地面をえぐる。左霧のいた場所は、あっと言う間に陥没する。
――無理だ、もう。雪子の心は折れかけていた。圧倒的に違いすぎるのだ。目の前にいれば、ひれ伏したくなるような、そんな感覚に襲われる。まるで、それが正しいような、誰にも頭を下げたことない雪子ですら泣いて謝りたくなるほどだ。
「せ、せんせい、霧島先生!!」
「バァッハッハッハッハッハ! ざまぁねぇな! 俺様に逆らうとこうなるんだぞ? わかったか小娘! よしお楽しみタ〜イム!」
「いや、いやぁぁぁぁぁ!」
巨漢の悪魔が大声をあげて雪子に襲いかかろうとした。もうダメだ。自分はここで殺されてしまうのだ。当然の結果だと雪子は思った。尊敬する母の言うことを聞かずに、日頃の退屈と好奇心に負けて紐解いてしまった禁断の力。それは到底人間に扱える代物ではなかったのだ。
「…………?」
目を強く瞑ったまま時が経った。だが一向に悪魔が自分を蹂躙することはなかった。恐る恐る目を開けてみる。そこにはまた、雪子には到底信じられない光景が目に映っていた。
先ほど叩き潰されたはずの左霧は、何かに守れながら姿を現したのだ。
「その子からどいてもらおうか。低級悪魔……!」
「てめぇ……魔法使い? いや、この世界では魔術師か? なぜ魔力が存在しない世界にてめぇみたいなのがいる?」
左霧から光が溢れている。奇跡の力。魔術。どの呼び方でもいい。この世ならぬ力は、左霧の周りを循環し、円を描くように次々と不思議な粒子が溢れ出した。
「こいつぁ……おもしれぇ……てめぇを狩れば、俺ァ上級悪魔入りよぉ!
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