悪魔
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諦めない。次の言葉が雪江を絶望に叩き落としたのだ。
「でしたら私、尊敬するお母様の後をついで『魔術師』になります」
「ダメだ! じゃ、なかった。そんな職業はない! ゲームのやりすぎだぞ雪子!」
「ゲームなど私の部屋にひとつもありません。お母様、どうして私に隠し事をなさるのですか?」
「隠し事なんてしてない! とにかく『魔術師』なんてダメだ! ダメ、ダメ、ダメ! ブブブブーーーー!」
手でバッテンを作り、雪子の顔に近づける。雪江は隠し事が下手だ。特に我が子に対しては甘さが滲み出てどうしても弱ってしまうらしい。そんな母が、雪子は好きなのだが。
「分かりました。お母様の言うことなら従います」
「そうか! わかってくれたか! 流石は我が子! 一生働かなくても楽して暮らせるように、お母さん頑張るからな! アッハッハッハッハッハ!!」
だけど母親として失格だった。
何にせよ、雪子は諦めてなどいない。手に隠し持った一冊の魔道書を大事に抱えながら雪子は自分の部屋に戻って行くのであった。
「お母様は絶対に教えてくれないし……」
無理を言うことなど出来るはずがない。拾って育ててくれた親にこれ以上の負担をかけることなどしたくない。
いや、こんなことがバレたら、雪ノ宮家として失格だ。途端に雪子は自分がここにいることに恐怖を覚えた。
「……帰ろう」
埃まみれのスカートを払い、髪にかかった蜘蛛の巣を払いながら、雪子はキビキビとした動作でその場をあとにしようとした。屋敷へこっそり帰って、シャワーを浴びて、ベッドに潜り込みたい。そう思うとさっさとこの場を立ち去りたかった。
「こんばんは、お嬢さん。そして――――」
「え……?」
「――――さようなら」
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