悪魔
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物が、また消失してしまった。
雪子はその場にペタンと座り込んだ。スカートは埃だらけ、足は泥だらけ。別にいい。自分が洗うわけではない。メイドには悪いが、今はそれどころではなかった。
「やっぱり……お母様に教えてもらうしか、ないのかしら……でも」
母、雪江は『魔術師』である。そして雪子とは血が繋がっていない。これは誰にも話したことがない雪ノ宮家の極秘情報だ。人に知られる訳にはいかない。ちなみに雪子という名前も雪江に与えられたものなのだ。当時はネーミングセンスのない母を呪った事もあったが今はそんなことはどうでもいい。
とにかく、自分は孤児だったということだ。なぜ雪ノ宮家に引き取られたのは分からない。小さな少女に手を引かれるまま、小さかった雪子は孤児院を後にした。以来、雪江とは母子という縁を結んでいる。今ではどちらが母なのか分からないほどに雪子は成長した。
雪江は自分のことを何も話さなかった。しかし自分をとても愛してくれた。何にせよ、自分の場所を確立出来たのは、孤児であった自分にはありがたいことだ。そして雪ノ宮家とは、
「魔術師の家系……」
母の話を盗み聞きしてしまったことがあった。縁者同士の話で血の繋がりのない雪子は参加することが出来なかった。偶然立ち寄ったドア越しに、雪子は聞いてしまったのだ。
「魔術師の血が絶えようとしている。何としても防がなくてはならない。今世紀こそ、我ら雪ノ宮が……の座を手に入れるのだ」
何かおかしな宗教でもはまっているのかと最初は思った。だが、それは勘違いだと思い返した。
「! 何をしている雪子! その本をこちらに渡さんか!」
絶対に入るなと言われていた屋敷の一部屋に立ち寄ったことがあった。いつもなら鍵がかけられていたのに、その日は何故か開け放たれておりこっそり入ることにしたのだ。
その部屋は異様だった。おかしな像や石。大量の書物。極めつけは、地面に描かれた紋章だ。書物を一つ手に取ったとき、雪江の慌てた声が響き渡った。
「お母様、これは何ですか?」
「本だ」
「いえ、ですから何の本かと」
「くだらん本だ」
「そうですか。ではお借りしてもよろしいですか?」
「ダメーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
子供のように大きな声を上げ、雪子を押しながらドアの向こうへやろうとする。だが、雪子の方が身長も力も強かった。負けじと踏ん張りながら雪子は聞きただす。
「お母様は魔術師なの?」
「雪子、ゲームのやりすぎだ。もっと現実を見なさい。近頃は何もやる気のないニートとかいう若者が増えていて大変なのだ。別にニートでも構わんが何か一つ、やりたいことを見つけるのだ。金はあるからな!」
小さな手を丸く丸めて雪江は自慢していた。しかしそれだけでは雪子は
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