不審
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を終わらせる為にノートを取ること。静かに放課後まで過ごすこと。
そして――――。
「じゃあここ、雪ノ宮さん読んでくれるかな?」
「はぁ!?」
思わず出してしまった反抗的な反応。正しくは「はぁ!? なんで私なんですか? どうして私なんですか? メンドくさいから他の人にしてください! というかどの行か分かりません勘弁してください!」なのだ。
言える訳がない。自分の乱暴な本性(自覚している)を晒すわけにはいかない。何よりも聞いていなかった自分の失態だ。
「えっと……雪ノ宮さん?」
だが、なぜだろう。ものすごく目の前の先生の困った表情がムカつくのは? 思わず意地悪をしてやりたいようなキョトンとしたつぶらな瞳。遂反抗的な態度を取らせてしまう威厳のない空気。
どうする? 隣の人に聞くことも出来る。こんなことがバレれば雪ノ宮家の恥だ。母親から怒られ……はしないか。あの人はそんなことで怒ったりはしない。むしろ笑いの種にされてしまうだろう。
「雪ノ宮さん、もしかして具合でも悪いのかな? もしそうだったら保健室」
「すいません。先生の『雑談』に気を取られてしまい、どの行から読めばいいのかわかりませんでした。先生の『雑談』がとても面白くって……素晴らしい『雑談』でしたわ、先生」
「ご、ごめんね。五行目からです……」
ありったけの嫌味を効かせたのだが、多少効果があったらしくオドオドとした表情でダメ教師は謝った。
――男らしくない人。そんな言葉を吐き捨てたくなった。今の状況はどう考えても自分は注意されるべき立場ではないか。そんなことも分からないで、まんまと雪子の罠に引っかかってしまった左霧。
(どうせ、学園長の娘だからってヘコヘコしているのでしょうけど……)
雪子は雪ノ宮の人間ということもあり、初等部からこの学園に在籍している。だからほとんどの教師から正当な扱いを受けていないことは子供の頃から知っていた。教師たちだけではない。生徒たちからも雪ノ宮という名前だけでそれ以外は注目されることはなかった。おかげで、友達らしい友達はほとんど皆無。自分の暗い人生を省みて、思わず遠い目をしてしまう。
(まぁ、自分に非があるってことも認めているけどね……)
そんな暗い幼少時代を過ごしていたこともあり、自分はひねくれている。そのひねくれた性格が災いして高等部に入って二週間程経ったが、依然として自分の周りには友達がいない。羨望やら時折感じる女の子からの熱い視線は当然無視するとして。
(いいのよ、私にはやるべきことがあるのだから)
気に入らない先生の要求通りスラスラと教科書の文字を音読する。これで満足か? と鋭い視線を教壇に向け、苦笑いをしている男の顔を一瞥しながら、雪子は再び自分の椅子へと腰を下ろした
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