不審
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みたいなことを言う! いいだろう、許可しよう」
「ありがとうございます!」
学園長の丸をもらったことで、左霧は気持ちよく退室した。その後ろ姿を確認した後、学園長雪ノ宮雪江は頭を悩ませていた。
「……困ったものだ、本当に」
その心底疲れたような声は、誰に聞こえるでもなく広い学園長室へと響き渡るのであった。
「……お前が求めているものは、どれほど強大で危険な力なのか、分かっているのか……」
雪江は二つの写真付きの書類を見つめ、また溜息をついた。
「まぁ何とかなるか! よし私はもう知らん! 何も知らん!」
そう呟いたかと思うと、さっきとは一転して楽しそうに鼻歌を歌いながら、雪江は高そうなティーカップへと紅茶を注ぐのだった。
雪子はいつも機嫌が悪そうである。ムッツリとした表情を変えることなくいつも机に佇んでいる。もともとこんな顔なのよ、なんて言い訳は通用しない。事実彼女はここ最近すこぶる機嫌悪いのだ。それは自分のやっていることが進まないことと、ここ最近赴任してきた先生が何だか凄く気に入らないのだ。何が気に入らないかって、まず一番に言いたいのが能力不足だということだ。まぁこの辺は経験がモノを言うことくらい雪子も知っているので大目に見てやってはいる。
「えー? せんせーって妹がいるの? 可愛い?」
「凄く可愛いよ! この前なんてね、遊園地に行ったときソフトクリームを顔に付けちゃって思わず写真撮っちゃったよ」
「わぁ、これって〜シスコンってやつ?」
「そうなのかなぁ、普通だと思うんだけど」
いえ、あなたは明らかにシスコンです。それもとびきりの! 雪子は立ち上がり堂々と叫んでやりたかった。だが今は授業の真っ最中。グダグダ状態とはいえ、雪ノ宮の娘である自分がこのふざけた会話に参加するわけにはいかない。
そんな雪子の苛立ちも知らず、ヘタクソな授業と時折混ざるくだらない会話を続ける左霧。授業三割、雑談七割の状態。
全面的に目の前の先生が悪いわけではない。授業に退屈した他の生徒が先生に質問をぶつけてきて、それを上手く避けることのできない可哀想な先生が、いちいち一つ一つ丁寧に返答しているのだ。激しく非効率であり、お人好し。雪子はそう分析した。
だが、表面的には悪くない。ルックスもそれなりだし、顔も中性的。強いて言うなら胸やそのほかのラインがふっくらと丸みを帯びていて、正直最初は女性だと思っていた。
まぁ世の中色々な人がいるし、詮索するのは野暮だろう。雪子はそう考えて、また小さく溜息を吐いた。
(何を考えているのかしら私は……)
くだらない思考を一気に引き戻す。目の前の先生の容姿など知ったことではない。今自分が考えるべきことは他にもっとあるはずだ。まずは、この退屈な授業
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