不審
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。わかったらさっさと仕事に戻るがいい」
古びた鍵を手の中で持て余しながら。理不尽な学園長のお叱りを受ける左霧だった。やれやれといった風に砂上は左霧と顔を見合わせながら呆れていた。最初から鍵を渡し、調べてくれと一言言ってくれればいい話だったのだ。どうにも学園長は気分屋でいけない。
「ああ、百合はダメだぞ?」
「どうしてですか?! 霧島君だけじゃ心配です! 私も、夜のデート、じゃなかった。付き添いとしてついていきます!」
「お前は公私混同するからダメだ」
「そんなことしません。ちょっと肩をくっつけたり手に触れてドキッとするくらしかしません」
「黙れさっさと結婚しろ」
「酷いです……学園長」
砂上は学園長にいじり倒されてさっさと退室してしまった。左霧も砂上がいてくれた方が心強かったのだが、あてが外れた。というよりも何故副担任である自分に任せたのか、そこが一番の疑問なのだが。
「なぜ自分が、という顔をしているな?」
「ええ、まぁ……はい」
「砂上は私のお気に入りだが……いささか能力にムラがある。そこで君だ、私は君の能力について何も知らない。ちょうどいい機会だと思ったのだよ」
「ペーパーテストでは不満、だということでしょうか?」
「あんなもの、体裁を整えるだけの言い訳に過ぎない。大事なのは君自身の本当の力だ」
左霧は少し内心残念に思った。その体裁を整えるテストの為に自分はかなり必死で勉強していたのだ。
この学園に赴任している教師は、基本的に高学歴でその能力も非凡な人ばかりだ。左霧自身も生まれは比較的いいものの、他の先生方と比べると不安な点があることは事実だろう。そのため、採用試験では高得点を取って認めてもらおうという密かな野心があったわけだが。
「採用試験など通過点に過ぎん。本当に大変なのはこれからだ。君を、試させてもらう」
頬杖をつきながら笑みを浮かべた学園長。つまり、これがホントの採用試験というわけだろうか。ならばどうすれば自分は認めてもらえるのか? そこまで考え、そして左霧は考え直した。
「学園長、一つ質問があるのですが」
「なんだね?」
「学園長はこの事態についてそこまで深刻に考えていないようですが」
「そんなことはないぞ。困った困った。困ったが、あそこにある資料は、『普通の人間』には理解できんからな。一体何をしているのやら」
普通の人間、という言い回しに疑問を持ったが、それよりも大事なことがあるので、左霧は話を続けた。
「では――――生徒の処遇については、僕に一任してもらえませんか?」
「ふむ……まぁ、いいだろう。だがどうしてだ?」
「事を荒立てたくはありませんし、生徒にもきっと何かしらの理由があると思うので、僕一人で向き合ってみたいんです」
「一端の教師
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