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魔導兵 人間編
電話
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いるだらしない主人の姿を確認した。布団を取られたにも関わらず、左霧は体を丸くしたまま動かない。このしぶとさが、いつもいつも華恋を苛立たせている大きな原因だった。

「左霧様――クソご主人様……それ以上惰眠を貪るつもりであるのならば、華恋にも考えがございます」

「痛いよ華恋……踏まないでよ……起きる起きるよ、今起きるってば……」

 そうはいうものの一向に起きる気配がなかった。大抵今起きると言う人間は、すぐには起きない。そんなことくらい華恋は承知の上だった。

「……では、左霧様、失礼ながら」

 華恋は笑顔のまま左霧が入っている丸い塊をすくい上げると同時に、その華奢な体からは考えられない力で窓の外へと投げてしまった。

「嫌ですわ、私ったらはしたない……」

 わざとらしく体に科を作り、頬を赤くする華恋。外で聞こえた悲鳴はあとで近所から苦情をもらった。ちなみにここは二階なので良い子は絶対に真似をしないでください。あと、窓ガラスは左霧の給料から天引きだそうです(華恋談)

「ううう……死ぬかと思った……」
「デッド・オア・アライブというやつですね。左霧様おめでとうございます」
「めでたくないよ! 頼むから優しく起こしてください華恋さん……」
「優しく? 優しく起こして左霧様は起きるんですか? 本当に、神に誓ってそう言えるんですか? 誓ってください今ここで、さぁ、さぁ!」
「……僕が悪かったです! ゴメンなさい!」
「わかればよろしいのです。さぁ桜子様、どうぞ召し上がってくださいませ」
「んー……二人とも仲良くねー……」
「ちっ違います桜子様っ! これは左様が! 全部左霧様がわるいんですよう!」

 朝から騒がしい霧島宅。二階から落ちたにも関わらず傷一つない左霧は置いておき、桜子も寝ぼけ眼のままご飯を口にしていた。間違えて髪を食べているところが何とも微笑ましい。その幼い桜子に必死に弁解しているのが、霧島家のハイスペックお手伝いさん(華恋談)華恋である。いつもの朝、だけどちょっぴり心が弾んでいるのは今日が休日だからだということは、三人とも心の中では分かっている。

「全く、左霧様には困ってしまいます。どうしていつもいつも私が苦労しなければならないのでしょうか」
「……嫌なら起こさなくていいのに」
「何か、いったか小僧?」
「……だ、だって休日くらいゆっくりしてもいいじゃないか! それに華恋だって楽しんでやっているでしょ!」
「そんなことはありません。いつも苦渋の決断を迫られて、華恋はストレスでハゲそうです! ああ、敬愛するご主人様を痛めつけなくてはならないなんて! 私は女中失格でございます! ぷぷ」
「確信犯だよ……」
 棒読みで心にも思っていないことを、自称霧島家女中の華恋さんは言った。腹黒い、
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