苦悩
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雪子はジッと先生の方を見て、固まっている左霧に声をかけた。無表情だが、その秀麗な容姿に思わず左霧は息を飲んだ。
(人形、みたいだな)
はっと今の表現を頭から消した。例えそうだったとしても言われた本人は、人形だと言われて嬉しいとは思わないだろう。
「先生? 大丈夫ですか?」
「あ、はい! ゴメンなさい、授業、続けますね!」
そんなことに頭を悩ませていると、雪子は怪訝そうに左霧に再び問いかける。チョークを取って黒板に向かうが、慌てているため何本も折ってしまった。もちろんその姿がおかしいので、生徒たちに笑われてしまったのは言うまでもない。
「雪ノ宮さん! さっきはありがとう助かったよ」
授業が終わり、生徒たちが思い思いに羽を伸ばすなか、左霧は一人の生徒の背中に声をかけた。教室から出るところにいいタイミングで鉢合わせになったのだ。
「……霧島、先生」
雪子は振り返り、先ほどのような感情の色が見えない表情で、左霧と対峙した。前髪は丁寧に切りそろえられて、後髪は首筋辺りまで伸ばしている。どことなく古風な感じがする少女だ。目元はキリっとした二重で、意志の強さを強調しているようだった。
「何の、お礼ですか?」
雪子は、不思議そうに左霧に問いかけた。どうやら彼女にとってはあの場面の出来事など取るに足らないことだったようだ。それでも、自分が助けられたことは変わりがないので、改めて左霧はお礼を口にした。
「さっき僕が生徒たちに質問されているところ、雪ノ宮さんが助けてくれたでしょ? 君がいなかったら収拾がつかなくなるところだったよ。ありがとう」
「……あれは、別に先生を助けたわけではありません。授業が進まなくなると私が困るから言っただけです」
「そうなんだ。でも結果的に君に助けてもらっちゃったのは事実だよ。ありが」
「――お言葉ですが」
雪子は鋭い口調で左霧の口を遮った。その目は、先ほどよりも心なしかキツいような気がした。まるで、嫌なものでも見るかのような。
「あなたは先生としての自覚が足らないと思います。先生なら、いつ、いかなる時でも生徒たちの育成に努めるべきです。であるのに今のあなたは何ですか? 私に助けられたとペコペコ頭を下げて。先生なら、先ほどの場面を恥じるべきであって、ましてや反省の色なしとなるともはやあなたに教鞭を振るう資格があるかも怪しい――と私は思います」
しばらく、左霧は何が何だか分からなった。やがて自分が雪子に説教されていることに気づき、どう反応したらいいのか測りかねた。そして出た言葉が、
「あ、えっと……ゴメンなさい」
なのだから、しょうがない。雪子もこれ以上は時間の無駄と判断したのか、それだけ言い残すと小さくお辞儀
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