花も恥じらう
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じゃ、じゃあ、霧島先生、自己紹介をお願いします」
「はい!」
立ち上がった左霧は、そのまま回れ右で、生徒たちの方へ振り向く。生徒たちが静まりかえった教室に、冷たい空気が漂う中、この男は堂々と自己紹介をしたのだ。
「霧島左霧です! 生徒の皆さん初めまして! 趣味は菜園! 座右の銘は一日十善! えっと……ああ、担当科目は国語です! 皆さんとは一緒にお昼ご飯を食べられるようなそんな関係を築いていけたらいいなと思っています! よろしくお願いします!」
新米教師の自己紹介はほとんど彼の自己主張で終わった。元気よくハキハキとした、大変よくできました、と花丸をあげたいくらいの紹介であった。無論、先ほどの大失態がなければ、だが。
さて、肝心なのは生徒たちの様子だ。このお嬢様学校と名高い学園の彼女らの反応やいかに――。
「ふふふ……おかしな先生!」
「男性の方? それとも女性の方かしら?」
「はいはーい! 先生質問でーす!」
「ドジっ子先生だぁ! かわいい!」
笑っていた。どの生徒も屈託のない笑みを浮かべていた。まるで左霧が来ることを待ちわびていたかのように、生徒たちの笑顔が教室を包み込む。
左霧は驚いていた。心配だったのだ。自分という異質な存在が、彼女たちに受け入れてもらえるのか、という不安に内心ではビクビクしていた。だが、どうだろう。この純粋な暖かい笑みの数々は。これが、学校なのだと、左霧の心は歓喜に震えている。
「あ、霧島先生? 質問されてますよ?」
砂上自身も驚いていた。流石に第一印象としては最悪の対面としか言い様がなかったが、それすらもプラスに変えてしまったのは、左霧が醸し出す柔らかく、真っ直ぐな雰囲気なのだろう。さっきまで慌てていた彼はもうどこにもいない。どうやってスイッチを切り替えたのか、彼は教室に入った途端、生き生きとした本来の状態に戻っていたのだ。
「はい、何でしょうか?」
「せんせーは、男の方ですか? それとも、女?」
「僕は男です。よく間違われますけど」
ええー! と周りから驚愕の声が響き渡る。それはそうだ、と砂上は生徒たちの反応に共感した。彼と初対面ならば、まず訪ねなくてはならないのは性別だろう。色白の肌、曲線を描く肢体。……胸の大きさ? とにかく、彼を男性と判断する材料が少なすぎる。だが、履歴書に男と書いてある以上、砂上はそうなのだろうと思い込まなければならない。詐称する必要性などどこにもないからだ。
「何歳ですかー?」
「今年で二四です。皆さんとは、ええと……大体九歳違いですね」
「だけど、百合先生とは四歳違いでーす!」
「私はまだ、二七歳! 三歳違いよ! 小娘!」
またもや教室内が笑いの渦に巻き込まれた。どう
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