学園長
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
少女の恐るべきジャンプ力により、左霧はパイプで頭を叩かれてしまった。しかし、左霧は日頃から桜子の教育にも携わっているため、よくこういった反抗にも遭遇する。その時は、いつも『お尻ペンペンの刑』と相場が決まっていた。そしてこの場合も、それが教育的指導にふさわしいと思った。多少の身体的ダメージは、躾という面では効果的だ。だが、それには、怒り以上に、『思いやり』が伴わなくてはいけない。よって、左霧は、この見ず知らずの少女のために愛を込めて刑を執行しようとしているのだ。
「あ、こら! や、やめろ! 何をする気だこの阿呆! 砂上! 砂上百合! 砂上百合、二八歳! 助けてくれー!」
誰かの名前を呼んだ途端、隣の教務室から一人の女性が血相を変えて飛んできた。
ビシッとした白いワイシャツにタイトな黒いスカート、を着た美人だった。髪は薄茶色に染めていて、今が旬のキャリアウーマンを醸し出している。その女性が、美人が台無しな程に、眉を歪ませて――学園長の元へ歩み寄り、一言だけ、
「私はまだ、二七です!!」
と必死な思い出告げるのであった。
※
「全く最悪だ! 『霧島』というからどんな奴が来たかと思えば、ただのナヨナヨした男女ではないか! もう少し余計なことをしていたら、クビにしてやったところだぞ! え? わかっているのね? 君!」
「はい……大変ご無礼を、申し訳ありませんでした……」
「いいか? 世の中見た目だけで判断していてはダメなのだよ? この内面からにじみ出る、ほら、わかるだろ、君?」
「分かりません……」
「わかれよぉ! わかってくれよぉ霧島くぅん? 私の体からにじみ出る、大人のオーラを、感じてくれよぉ!」
結果的に、左霧は、少女の前で正座をしなくてはいけなかった。そう、少女こそこの学園の創立者であり、学園長の『雪ノ宮(ゆきのみや) 雪(ゆき)江(え)』その人なのだ。左霧の拙い情報によれば、今年で確か四〇歳だと聞いていたのだが、
「ん? なんだその目は? まさかまだ疑っているんじゃないだろうな? もしそうなら、君の評価を今一度考えなければいけなくなるが?」
「い、いえ……雪ノ宮学園長は……そのとてもお若く見えますね……」
「ふんっ、これでも一児の母だ!」
嘘だろう! と思わず口を開きかけたが、これ以上は藪ヘビだろうと我慢した。この場は大人しく首を縦に振っていた方が正解に違いない。社会というには認められないことも認めなくてはならない恐ろしい場所だ。左霧はそう習っていた。だが、その小さな体でどうやって稚児を産んだのか、それが左霧にとって最大の謎になってしまった。この男は無駄に物事を考えやすいたちなのだ。
「霧島さん、先程は失
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ