学園長
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の上から、その体を抱きかかえた。抱えてしまったのだ。
「言うことを聞かないと、恐ろしい魔法使いが君を食べてしまうよ? そら、一緒に初等部へ戻ろう?」
ニコリと、左霧は笑った。その笑顔は、男性ですら魅了してしまうほどの威力を称えている。左霧の容姿は、中性的、いやむしろ女性的な魅力の方が多い。色白の素肌、整った顔立ち、細長い眉、小さな口……これで胸部が膨れ上がっているなら、誰もが彼を女と見間違えても致し方ないであろう。
しかし、今はそんなことは全く関係ない。彼の笑みにも、少女は反応しなかった。いや、反応した。ゾッとするような殺気を込めた瞳で。
「貴様、下ろせ」
「こらそんな言葉使いで話してはいけません。大人と話すときは敬語を使いましょう、ね?」
「ね? ではない! 下ろせ、こら、馬鹿者が!」
両手を振り上げて、あらんばかりの力で暴れる少女に、流石の左霧も何やら事情があるのではないか、と察し、遂には、少女の言いなりになってしまった。
陸地に到着した少女は、黒いレースのドレスを手で払いながら怒りを滲ませている。よく見たら、年相応の服装とは思えない。どちらかといえば、大人向けのパーティードレスのようだ。
「全く……様子を見てやろうと思ったが、またとんでもない奴が来たものだ……」
少女は溜息を尽きながら再び執務椅子にどっかりと座る。足を組み、いかにも偉そうに威張り散らしている。どこに置いてあったのか、パイプを加えるとそれをゆっくりと吸い――勢いよく左霧に向かって吐き出した。
「げほっ! げほっ! ちょっと、げほ!? いくらなんでもその年で喫煙はっげほ!」
「ほんっとうに鈍い奴だな君は! 私が学園長だ! このマリアナ学園の、が く え ん ち ょ う だ! いい加減気づけ、阿呆!」
プリプリと頬を膨らませこちらを叱りつける少女は、誰がどう見ても、年相応の女の子だった。おそらくこのまま何事もなく話を続けていたら、左霧は一生この少女を『学園長』だと認識しなかっただろう。一概に、左霧が悪いという訳では、決してないのだが。
「そんなことを言って僕を困らせても無駄だよ? ほら、一緒に教室へ行こう? 何があったか知らないけど、よかったら聞かせてほしいな。あ、でも僕は高等部の先生だったね。まぁいいや、今はここから出るのが先決だ」
「ええい私の手を握ろうとするな! いい加減にしないと解雇だ解雇! いいのか!?」
「こら、大人を舐めてはいけないよ。その言葉にどれだけの人の生活がかかっているか、ゆっくり教える必要があるみたいだね」
「ああこら、頭を撫でるな……気持ちいい……ではない、ふん!」
「痛い! 何てことするの! もう注意だけじゃすまないよ? お尻ペンペンの刑だ!」
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