行ってきます
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だった。
華恋のかしこまった見送りに手を振りながら、霧島兄妹は仲良く学園への通学路を歩く。桜子は初等部へ、左霧は高等部の教師として、目的は違えど通路が同じなのは幸いだった。
「おにーさま! おにーさまは桜子の先生ではないのですか?」
「うん。僕は高等部の先生だからね。桜子よりもずっと年上の生徒が多いだろうなぁ」
「ええー!! じゃあおにーさまには学園では会えないの?」
「うーん……用事があれば会えると思うけど、多分難しいだろうね」
初等部と高等部は同じ学び舎だが、距離が離れている。桜子に会うためには、中等部の学舎を抜けなければならない。それだけでもだいぶ時間がかかるのだ。
それに、学園では教師と生徒という形になる。生徒として桜子に接しなくてはならない分、甘えが許されない立場だ。その為、あまり顔を合わせるのは好ましくないのではないかと、この男、覚悟だけは立派なのだ。
「おにーさまと一緒に給食、食べたかったな」
「桜子、給食はお友達と食べるものだよ。友達と食べる給食は美味しいよ」
「そうなの?」
「……きっとね」
桜子の疑問には曖昧に答えるしかなかった。自分は桜子のように学校で勉学に励んだことなど一度もない。そのため、桜子がどのような生活を送るのかも分からなかった。頼りない兄であることは自覚しているが、経験がない以上励ますことも出来なかった。
「そっかぁ……お友達、出来るといいな」
そんな兄の気持ちは露知らず、桜子は期待に胸を抱いているようだ。およそ、不安など感じさせない笑顔に、左霧は安心した。
(この子なら大丈夫だろう)
桜子のことより、多分自分の方が緊張している。左霧は、これから始まる教師生活に期待、六割、不安七割の中途半端な数値で自らの職場へと足を踏み入れるのであった。
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