行ってきます
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だが、依然として華恋は自分たちに遠慮している節があるのは、同居している左霧にとって、少し残念に感じることの一つだ。
遠慮する必要なんてない――そうは言っているのだが、華恋自信がどこまで踏み込んでいいのかわかりかねている。実際、霧島という家が、どれだけ複雑な環境にあるのか、それを知っている地点で、華恋は物怖じしているのかもしれない。何にせよ、献身的に、自分と妹に尽くしてくれている彼女に、左霧は感謝しても足りないくらいなのだ。
「華恋、君は桜子にとって、母であり、姉でもある。僕たちには君が必要なんだ」
「もったいないお言葉です。あの日、あなた様にいただいた命、この華恋、精根尽き果てるまで、あなた様と桜子様に御使い致します」
「重いなぁ」
「私は重い女ですか。分かりました、首を吊って死ねばいいのですね」
どこから持ってきたのか、桜の木に太いロープをくくり付けようとしている華恋を羽交い絞めで止めた。どんな時でもジョークを絶やさない彼女は、本当に女中の鏡なのだ。ただ、本音なのか、冗談なのかが分からないので、一応体を張って止めなくてはならない。
「……せっかく綺麗に咲いているのだから、そんなことをしたら台無しじゃないか?」
「離してください左霧様。重い女などと言われたら男性に嫌がれる女ランキング一位確実です。死んだほうがマシです!」
「君は僕たちによく『尽くしてくれる母親』のような存在だよ。お、重くなんてないよ!」
「最初からそう言ってください。全く、冗談がお好きですね、左霧様は」
どうやら今のは本気だったらしい。軽く冷汗をかいた左霧は、今さっき瞳孔を開きながら暴れていた華恋を必死でなだめた。どうやら、彼女にとってNGワードだったらしい。密かにメモを取りながら左霧は溜息をついた。
「おにーさま? 華恋? どうしたのですか?」
気がつくと桜子は兄の下に寄っていた。彼のスーツを掴みながら首を傾げ、キョトンとした瞳を二人に向けている。
「何でもございません。ただ、左霧様が私をいじめて楽しんでいるのです。何でもないのですが」
「おにーさま! めっ!」
「ええ!? 僕? 僕が悪いの!?」
何だか釈然としない左霧だったが、今度は本当で泣き真似をして、桜子にすがりつく華恋は、完全に悪女だった。桜子が頬を膨らませながら兄を叱責してる。部が悪い左霧は押し黙るしかない。ただ、やっぱり少し重いなと、密かに華恋への感想を抱いたのは、秘密だ。
「みんな仲良くが一番です」
「はい、流石桜子様です」
「うん……納得いけないけれど、その通りだね」
桜子の手が、左霧と華恋の両方の手を掴む。そして、三人の手が重なる。途端に、桜の花びらが風に舞い、人々を包み込んだ。それはまる
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