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あかりの碁
プロローグ
あかりvs水橋紫三段
この子、本当に強いわ……
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心がいっぱいになってしまったのは。

「じゃあ、あたしが打ってあげる。それで実力を思い知ったら帰りなさい」

「は、はあ」

「ほら、行くわよ。院生に会いたいんでしょ?」



そう言って院生たちのいる部屋に行く。彼女を無理やり連れて。
そして部屋の開いた碁盤を無理やり占拠して彼女を座らせる。

「さー打ちますか。ハンデはいくつがいい?」

「うーん…… すみませんが、互先でいいですか?」

「そう。 わかったわ」

互先、か。 プロのあたし相手に、ね。
何を望んでいるのかは知らないけれど、期待させたぶんの力は見させてもらうわよ。

「いいわ。叩き潰してあげる。」







強かった。 圧倒的な強さ。……本気で打ってるのに。
弱かったら、60目くらい差をつけて終わらせてやろうと思ってたのに。

一手一秒もかけていない適当にしか見えない打ち筋なのに、ちっとも差がつかない。
むしろ差を付けられてるような感じさえする。

相手はこれまで3回ミスをしてる。でもどれも、最低限の損失で凌がれた。
それどころか、ミスだったはずの石の1つが今あたしを切り崩さんとしている。
普通ならそう言ったミスをしのぎきれないまま、あたしの勝ちという展開になるはず。

けど現実は、それらのミスのおかげで何とか戦えている状況ね。
もしあのミスがなかったら、とっくの間に投了……。

末恐ろしい。これが小学生の打ち筋なの?
まあ塔矢アキラとか、そう言う異常なのはいるけど。
そいつは、普通碁石なんてものを持たせようものなら喉に詰まらせそうな時期から
ずっと囲碁を習っていたからこそできるものであって。

まさか、目の前の彼女もそんな育ち方をしたのだろうか。
だとしたら、その親はどれだけ囲碁好きで、どれだけ偏屈な親なんだろう。
あたしなら、そんな親の娘になんかなりたくない。

……と言うかそろそろ終局が見えるわね。冷静になれ、あたし。
しっかり考えろあたし。こんなに感情の起伏が大きいと勝てる戦いも勝てなくなるわ。

と言うか……ああ、もう終わってるわこれ。
このまま行けば黒56目、白55目半。あたしの半目負けじゃん。
これまでミスをいくつかしているあの子が寄せでミスすればあたしの勝ち。
だからまだ可能性はあるけど、小学生の相手のミスを待ってつけ込むとかプロのやることじゃないよね……。


それに、もう目的は達している。 認めるしかない。
彼女こそ私達を、女流棋士を救う逸材になりえる、最高の原石だと。
そう思ってたら。

「負けました。ありがとうございました。」

なんとあの子の方から、投了してきた。
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