暁 〜小説投稿サイト〜
ワンピース〜ただ側で〜
番外5話『そしてリトルガーデン』
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てまだまだだけどな」

 遠い目で自分がいた環境を思い出しながら言うハントの言葉を聞けば大抵の人間は渋い顔を見せるはずなのだが、ルフィは「へー!」と明らかに嬉しそうな表情を浮かべて「じゃあ7ぶかいのクロロダイルもハントぐらい強ぇのかな」
 と問いを重ねた。
 クロコダイルの名前をルフィが間違えていることに突っ込みを入れることなく、ハントは難しい顔で目を閉じて言う。

「クロコダイルか。んー、どうだろうな……師匠からは……まぁ七武海にも勝てるかも、っていう評価をもらったけど。実際は互角かまだ俺のほうが弱いかってところだと俺は思ってる」
「ハントより強ぇのか!」

 これまた嬉しそうにルフィは笑う。これから戦うことになる相手が自分たちよりも強いかもしれない、そういう言葉を受けても笑っていられるルフィを見て、ハントに溢れるのは呆れとかいった感情ではなく――

 ――こういうのが、俺にはないんだよな。

 憧れや尊敬などの、そういった感情だった。
 ハント自身もどういえばいいかわからないなにか。
 それは白ひげ、エース、ジンベエ。彼らが持っていて、ハントが持っていないなにかで、ただ単純な強さではなく、もっと心の奥底に眠っているなにか。

 たとえば死に瀕したとき、肉体の限界を精神が超えて立ち上がったりするほどのなにか。
 総じていうならば人の根本を支えるなにか。ジンベエという師匠の庇護下で生きてきたハントが得ることのできなかった何かだ。
 自分が求めているそれを、ルフィが持っている。
 それがどこか悔しくて、だがなぜか嬉しくてハントは自然と言葉を発していた。

「多分ルフィならクロコダイルにも勝つんだろうな」
「あたり前ぇだろ! 海賊王になるんだ、7ぶかいなんかに負けてられるか」

 誰が言っても嘲笑されて流されてしまうような言葉を、ルフィが言うからこそ説得力があり、決して冗談ではないと感じることができる。だから、ハントは「そうだな」と頷き「クロコダイルを倒すのは俺だけどな」と笑ったのだが、それはルフィにとって容認できる言葉ではなく「なにいってんだ、俺だ」とすぐさま言葉を打ち返した。

「いやいや、俺だから」
「いいや俺だ」
「いやいやいや――」
「お前ぇなにいって――」

 お互いに頑として譲らない。
 このままでは埒が明かないと判断したらしく、ハントが何かを思いついたのか手をたたいて言う。

「じゃあ勝負だな!」
「……勝負?」
「どっちがクロコダイルを倒すか。どっちが勝っても恨みっこなしの、勝負だ」
「おーし」

 二人が楽しそうに、そして嬉しそうに笑いあい、それが背中越しに伝わってまた笑う。
 弾んだ笑い声が闇の海へと流れゆく。揺れる波がその声を逃すまいとしているかのように穏や
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