第十一章 追憶の二重奏
第二話 家族
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「……家族……か……」
士郎である。
柵に手を乗せ夜空を見上げる士郎は、ルイズの父親と母親の事を思い出す。色々と無茶苦茶な両親であったが、ルイズへの愛情は確かであった。アンリエッタから聞いた話から考えれば、ルイズを襲ったのも、ルイズに対する刑罰を少しでも小さくするための苦肉の策であったのだろうと今は思う。それでも流石に竜巻はないだろうと思いながらも、まあ自分の周りも大概だったし、そういう親子もいるだろうと納得する。
そう、自分の家族も色々と……本ッ当に色々と大概であった。
何が原因なのか唐突に始まる姉妹喧嘩で家の一部は吹き飛ばすは、知らない間に借金の担保にされた挙句、金の悪魔の元に半ば……というか完全に拉致されて何故か執事として働かせられたり。一人で寝ていた筈なのに朝起きたら布団の中に「ちょっと寒くて」と真夏に潜り込んでくる姉がいて、そう言う時に限って仲良く起こしに来た姉妹二人に殺されかけて……。
本当に大概だな……と手摺りに倒れこむように寄りかかった士郎だが、俯いた顔は柔らかく綻んでいた。
今頃自分がいなくなったことで心配しているだろうが、色々と無茶をやったため、あれ以上あそこにいれば巻き込んでしまう恐れがあった。口にすれば怒って否定するだろうし、引きとめようともするだろう。ついてこようとする者さえいただろう。
だが……だからこそ駄目であった。
皆……才能や夢があり、家族がいた。
それでもと言うだろうが、士郎はそれだけは我慢できなかった。
こんな壊れた俺でも……俺がいいと言ってくれた人たちだからこそ…………。
―――好きにしたら。
ふと、思考に言葉が過ぎる。
それは一年程前、この世界に来る前に聞いた言葉。とある死徒との戦いを前に、最後に立ち寄った家から出る際、玄関の外に一人立つ女の姿。
―――何処に行っても、何をしても……。
夜が明け切らぬ、未だ星の明かりがちらつく空の下、うっすらと漂う朝霧を纏いながら女は背を向け声を掛けてくる。
―――士郎がしたいことをしたらいいんじゃない。
小さな欠片のような光を受け、夜の闇よりも深く美しい黒髪は時折吹く風に揺れていた。
―――ただ、これだけは覚えときなさい。あんたが何処にいようと何をしていても……。
ゆっくりと振り返った女は、
―――あんたはね……一人じゃないってことを、ね。
優しい笑みを浮かべていた。
思い出に浸るように、閉じた目で夜空を見上げる士郎は、あの時彼女が口にした言葉の意味は今でも良く分からない。あの時の彼女は俺が何をするつもりか知っていた筈だし、彼女の性格ならば、止めようとするか、それか着いていこうとしたはずであった。だが、彼女はあの時ただ
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